part Kon 7/23 pm 4:45
……ミスった。
あたしは 今 猛烈に後悔していた。
調子乗って あきちゃんにAV見ようなんて言うべきじゃなかったんだ…。
あたしが前にAVを見たときは 先輩達のときも 友だち達のときも 4~5人で 茶々入れたり ツッコミ入れたりして みんなでワイワイキャーキャー言いながら見たんだった。
ところが あきちゃんときたら TVモニターの前に正座して 真剣そのものの表情で画面に集中している…。
なんか〈性教育の勉強〉とか そんなこと思ってるんだろうか?
ビデオが始まった当初は 前見たノリで『ありえないよね~』とか ツッコミ入れたりしてたんだけど 1人じゃ それも続かない。
静かな部屋で 2人で黙々とAVを見る…。
画面から聴こえる女優さんの喘ぎ声が やたら大きい気がする。
音は けっこう絞ってあるから 1階のパパやママまで聞こえるハズないけど かなりドキドキする。
ドキドキしてるのは それだけが理由じゃなかった。
前見たときは 流し見だったけど 今度はナニやってるのか マジマジと視ちゃってる自分がいる。
……うわぁ あんな大っきいのが ズッポリ挿入っちゃうんだ…。
男優さんの腰が激しく動き 腰同士がぶつかり合うパンパンってゆー音が響く。
思わず生唾を飲み込む。
スゴい… 。
女優さんも おもいっきり腰振っちゃってる…。
あんなに喘いじゃって…。
オチンチン 挿入られるのって やっぱ気持ちいいのかな…?
どうしても そんなことを考えてしまう。
…ヤバい。
アソコが少し濡れてきて 乳首も少し固くなってきてるのが解る。
自分から誘っといて 興奮してるとか超恥ずかしいし 恥女っぽい。
ホント あきちゃんといると なんか調子狂う。
気づかれてるんじゃないかと 心配になって あきちゃんの様子をチラッと伺う…。
……ええっ!? マジ!?
そこには驚きの光景が広がっていた。
思わず声をあげる。
「あきちゃん!?」
………。
……。
…。
「あきちゃん 大丈夫? ちょっとは落ち着いた?」
兄貴の部屋の始末を終えて 自室に戻り あきちゃんに声をかける。
「あー もう 大丈夫っぽいです…。ホ ント ゴメ ンなさいです…」
萎れたような あきちゃんの声。
少し鼻にかかってる。
それもそのハズ。
右の鼻の穴にティッシュが詰まってるのだ。
さすがの美少女も形無しだ。
そう。
あきちゃんは AV見て鼻血 出しちゃたんだ。
中学生男子かつーの。
……いや 見ようって誘ったあたしが悪いんだけどさ。
あきちゃんの横に座り 首の後ろをトントンと軽く叩いてあげる。
あきちゃんが上目遣いで あたしを見上げる。
ティッシュ詰めたまま。
なんか ホント あきちゃんってカワイイ。
何でこんなにカワイイの?
賢いし 頼りになるし 優しいし お化粧もお絵描きもできる美少女お嬢様なのに エロビデオ見て 鼻血とか おバカ過ぎる…。
トントンをやめて 頭 ナデナデに切り替える。
「……こんのさん?」
「ごめん ごめん…。いやぁ あきちゃんが あんまりカワイイからさぁ…」
あきちゃんは ちょっと憮然とした表情。
「そんなこと言って…。アタシのこと子ども扱いしてません?」
「……ちょっとしてるかも。だって 鼻血…」
「いっ いや あの… その… 。あっ あのビックリしちゃったってゆーか… 初めてだったから その…。頭に血が昇った だけで 興奮したとか そーゆーんじゃないんです… ホントですよ?」
ムキになって 言い訳を始める。
一生懸命 喋ってるとこもカワイイなぁ…。
「あきちゃんってさ いつも颯爽としてて『アタシ 恋愛とか興味無いです』って感じに見えるけど ちゃんとエッチなことに興味あったりするんだね」
「だっ だから… ホント 初めてで ビックリしちゃっただけで…」
「いいよ。言い訳なんてしなくて。あたしも 興味あるから 誘ったんだし」
あきちゃんは 真っ赤な顔して まだ口の中でゴニョゴニョ言ってる。
また 鼻血 吹かなきゃいいけど。
「あたしさ… あきちゃんが エッチなことに興味あったり 進路のことで悩んでたりって知って ちょっと安心したの」
「えっ?」
「いやぁ なんか あたしと似たようなこと考えたり 悩んだりしてるんだなぁって。あきちゃんって いつも颯爽としてて カッコいいし お金持ちだし 賢いし カワイイし 悩み事なんてきっと無いんだろうなって思ってたの」
今日わかったこと。
あきちゃんも 悩む。
当たり前って言えば当たり前だけど。
「そっ そんなこと無いです…。アタシ 決断力とか無いんで いっつもウジウジ悩んでばっかです…」
「…うん。そうなんだよね……きっと。でも あきちゃんも悩むってわかって あたし ちょっと嬉しいんだ。なんか いつも あきちゃんに助けてもらってばっかりだからさ…。あたしも 少しは あきちゃんの役に立ちたい。あたし あきちゃんみたいに賢くないし 上手く解決とかできないと思うけど 話聞くだけなら いつでも聞くから。だから また 話してくれたら嬉しいかも」
そして もう1つ 今日 わかったこと。
「あっ アダルトビデオ見て 鼻血出しちゃたことは 悩まなくて大丈夫だよ? あたしと あきちゃんだけの秘密にしとくから。大丈夫 大丈夫」
あきちゃんの眼を覗き込みながら 少しイジってみる。
「ううっ… こんのさん イジワルです…」
いつも頼もしいあきちゃんの思わぬ弱点。
それは ウブで奥手なこと。
あたしだって恋愛経験無いし そんなエッチに詳しいワケでもないけど さすがにあきちゃんほど ウブでも奥手でも無い。
あきちゃん その手の免疫が ぜんぜん無いみたいで エッチな話題でイジるとすぐ動揺して
まあ あきちゃんとの会話がエッチ絡みばっかってゆーのは アレだし そう頻繁にやるのは気が引けるけど ほぼ確実に
そーいや 恋愛ネタとかは どーなんだろ?
初めて会ったころ『出会いが無くて…』みたいなこと言ってたけど そのあとは その手の話も聞かない気がする。
大抵 あたしがバレーか学校の話題 しゃべり散らして あきちゃんが聞いてくれてるってゆーのが定番のパターン。
あとは T-GRO とか面白かった動画の話題を 時々あきちゃんがするくらい…。
ちょっと試してみよう。
「悩み事って言えばさ 恋の悩みとか無いの? あきちゃんって 彼氏なしなんでしょ? じゃあさ どんな男の子が好みなの? エッチ上手な人?」
「もうっ!そんなことばっかり!怒りますよ!?」
あっ 怒った…。
やっぱ イジり過ぎはダメ。
「ごめん ごめん。で どんなタイプが好み?」
「 あー あの… アタシ 女子校で 出会いとか無いし…」
「そうじゃなくて 理想のタイプとか ないの? 好きな芸能人とか…さ」
実際 聞いたところで 紹介できるような男友だちとかいないワケだけど。
クラスの男子どもは ヘタレばっかだし 中学のときの連中も イマイチだしなぁ…。
「好きな芸能人ですか? T-GROのAYANO.さんとか好きですけど」
「アヤノさんって 女の人でしょ? そうじゃなくて 男の人のタイプ」
「あー いや… 特に無いんですけど…。 強いて言えば 感情表現が豊かな人ですかね。笑ったり怒ったりが ハッキリしてる人が いいかもです」
なるほどね。
確かに ハッキリしないヤツってイライラする。
でも あたしみたいに喜怒哀楽 激しい人間と付き合うのも 疲れる気がするけど。
自分ですら 自分自身のテンションの上がり下がりに振り回されて 疲れてるときあるし…。
あたしは どっちかってゆーと落ち着いた感じの人の方がいいなぁ。
「こんのさんは どんな人がタイプですか? 前 片想い専門とか言ってましたけど 今も片想い中ですか?」
……片想い専門。
そーいや 前に そんなこと 言ったかも。
自分で言った言葉だけど 的確過ぎて自分が痛い…。
「…あたし レギュラー獲るまで 恋愛禁止って決めてるから」
「あー そうなんですね…。じゃあ 高校 入ってから 全然 片想いとかしてないんですか?」
…ううっ。
さっきから イジりまくった仕返しなのか ただの偶然なのか あきちゃんの言葉が 次々に心に刺さる。
「……いや そーゆーワケでも無くて…さ。あたし 去年 卒業した男バレのキャプテンのこと 好きだったんだけど…。遠目に見てただけで なーんにも出来ないまま 卒業して 東京の大学に行っちゃったの」
「今でも その先輩のこと 好きなんですね?」
あきちゃんが 容赦なく古傷を抉ってくる。
優しかった柏木先輩のことを 思い出すと胸が締め付けられる気がする。
だけど 不思議と涙は 出てこない。
「どーなんだろ? 春頃は…さ 先輩のこと考えただけで 涙が出そうになったんだけど… 今は そこまでじゃあ ない…かな。別に先輩のこと嫌いになったんでも無いけど」
その時は 一生に一度の恋だって思ってた。
忘れられるハズないって思ったからこそ 髪の毛をバッサリ切った。
だけど 実際には あたしの一人相撲。
痴漢騒ぎやエプロンドレス セッター転向とか日々のアレやコレやに追われてるうちに 先輩のこと忘れかけてる自分がいる。
「痴漢騒ぎからこっち なんかバタバタしてるうちに 気がついたら なんだか立ち直っちゃってるな…あたし。別に 新しい恋に出会ったってワケでも無いけど」
「こんのさん スゴい美人で性格も素敵だから きっと こんのさんのこと好きだって想ってる人がいると思いますよ。こんのさんが 気づいてないだけで…」
あきちゃんが また 褒めちぎって 慰めてくれる。
「ありがと。そーだといいんだけど」
「大丈夫です。きっといると思います。身近なところに…」
あたしのこと想ってくれてる人か…。
そういう人がいればいいとは思うけど クラスのヘタレ男子みたいなのに想われてもウザイだけだしな。
あたしのこと守ってくれる そんな素敵な王子様がいればいいんだけど…。
「そーいや あきちゃん。素敵な出会いが1回だけあったよ。運命的なヤツ」
「…そうなんですか?」
あきちゃんは ちょっと怪訝な顔。
「うん。その人ね あたしが 痴漢されて困ってた時に 全力で あたしのこと守ってくれたの」
「……それって アタシのことですか?」
「そう。あの時のあきちゃん ホント カッコよかったし 惚れた~って思ったよ。あきちゃん 男だったら良かったのに…」
軽い冗談だったんだけど あきちゃんの顔に 困惑?悲しみ?なんとも言えぬ微妙な表情が浮かび 一瞬で消えた。
前に一度だけ見たことのある表情だった。
「……ホントですね。もし アタシが男の子だったら こんのさんに交際申し込んでます。『お願いします!』って」
あきちゃんは にっこり笑って 冗談を流してくれる。
だけど その微妙な表情は あたしの心に焼き付いて いつまでも消えなかった……。
………。
……。
…。
to be continued in “part Aki 7/23 pm 5:12”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます