part Aki 5/16 pm 3:49




 30分走る間に少し遅れを取り戻し 急行は15時49分に 藤浜のホームに到着した。予定よりは遅れたけど それでも待ち合わせよりは10分以上早い。たぶん こんのさんより早く 待ち合わせ場所に着けたはず…。運転手さんナイス。

 列車を降り ホームを見回す…。


 

 …いた。


 

 背の高い女の子が ベンチのところから 手を振ってくれている。……こんのさんだ。


 

 ……いや。


 

 デート・・・じゃなくて〈学校帰りのお茶〉だし…。ボクが 絶対先に着いてなきゃいけないワケじゃないし…。心の中で 負け惜しみを ブツブツ呟くけど もちろん にこやかに挨拶する。


 

「ごめんなさい。こんのさん。待たせちゃいました?」


「ううん。まだ ぜんぜん 時間前だし 大丈夫 大丈夫。でも あきちゃんマジメだから きっと早めの電車で 来るって思って ベンチで勉強してたんだ。大正解だったね。テストのヤマも これくらい当たればいいのに…」


 

 そう言うとケラケラと笑う。こんのさんの明るい笑顔を見てると つられてボクも笑顔になる。


 

「で 今日は どうします?」


「ああ それなんだけど あたし お金ないしさぁ…」


 

 まぁ そうなるよね…。

 ファーストフードかコンビニかな? 藤浜には ハンバーガー屋があるし 桜橋には ドーナツショップがある。ハンバーガー屋でポテトってゆーのもいいかもだけど どっちかってゆーと ドーナツの方が気分かな。……女の子みたいってゆーな。しょーがないだろ? 身体は 女の子なんだから。男の子みたいに がっつり食べられないんだよ。『桜橋のドーナツショップにしませんか?』って言おうとしたところで こんのさんが話を続けてきた。


 

「それでさぁ いろいろ考えたんだけど よかったら ウチん家 来ない?」


 

 えっ? それって〈お家デート〉? 一瞬 ドキッとするけど すぐ冷静になる。…落ち着け。〈学校帰りのお茶〉だ。……しかも〈女の子同士〉だ。


 

「ウチん家だったら お金使わずに済むし…。一応 お店だしさ?」


 

 あっ そっか。こんのさんの家はお好み焼き屋だったっけ。お店のところで お好み焼き食べながら〈学校帰りのお茶〉するって話か。そりゃねぇ。こんのさんの部屋で2人きり……とか妄想し過ぎだな。お好み焼きか…ドーナツの方が好みだけど せっかくだもんな。


 

「えっ? いいんですか? お家の方 迷惑じゃないです?」


「大丈夫 大丈夫。どうせ6時頃まで お客さん来ないから ぜんぜん オッケー」


 ………。

 ……。

 …。


 


                        to be continued in “part Kon 5/16 pm 4:04”





 

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