第11話 任命


「お兄さん、そこへ正座」


「……あう」



 せっかく素敵な提案してくれたのに……お母様はシュラ伯父様を床に座らせたわ。なんでかしら?



「数個ならまだしも……リーシャにたくさんパンを作らせる気? シェトラスさんとレイ君しか今厨房にはいないのよ?」


「……そうだけど」



 伯父様は伯父様で、さらにしゅんとなったわ。



「孤児院の子達だって、卒業生が何人か残って調理出来るようになったんだから……大丈夫なはずでしょう?」


「それがそうでもないのよ、チーちゃん」


「え?」



 お母様が説得されている途中で、マックス様が大きくため息を吐いたわ。



「チーちゃんのパンが、やっぱり一番だからよ? あんたの弟子のひとり……ケイミーが食べたいって恋しがっていたわん?」


「……ケイミーちゃん」


「ついでに、クラットとかもね?」


「……だからって、その役割をリーシャに」


「七つだからって、この子はひとりじゃないわよ。あんた以外にも助けてあげる人間は山ほどいるんだから」


「……そうね」


「そうだ、チャロナ。俺達がいるんだ」



 お父様も、ディオスを渡しながら……笑顔で言ったわ。


 ってことは!!



「あたし……もっともっと、たくさんの人達にパン作っていいの?」


「もちろんだ、我が娘」



 お父様が……あたしの前に膝を折って、いい子いい子って撫でてくださった!!



「リーシャ=コルク=ローザリオン!! 承りました!!」


「やったんだぞ!!」



 伯父様はすぐにあたしを抱っこしに、ダッシュしてきて……頬擦りしてきた。ちょっと痛い!!



「伯父様……痛い!」


「感謝の気持ちなんだぞ!!」


「……お兄さん? カイルキア様が許可しても、なかったことにするわよ?」


「相変わらず手厳しいんだぞ!」



 とりあえず……孤児院は行ったことあるから。


 久しぶりに行って、どんなパンにするのか……伯父様と一緒に行くことになった。


 伯父様は転移の魔法が大得意だから、すぐに行けるのよね?



「あらあら、王太子殿下。おひさしゅうございます」



 出迎えてくれたのは、おばちゃまだ。


 孤児院の院長さんであるマザー。



「こんにちは!」



 けど、挨拶は大事だから……あたしはすぐに手を上げた!



「あらあら、リーシャ様? 今日は遊びに来られて?」


「ううん!」


「え?」


「リーシャにも……特別な異能ギフトがあるとわかったんだぞ。我が妹と同じようで違うものが。彼らの許可も得て、差し入れを再開させたいと思っている!」


「そうなの!」


「まあ……本当にですか?」



 だから、ケイミーお姉ちゃん達がいるとこに案内してもらったわ!!

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