パン職人の子どももパン職人!!ー精霊と錬金術で大活躍ー

櫛田こころ

第1話 願ってたけど

 ずっと前から……お母様達が願っていたこと。


 あたしの……『弟』が生まれた。


 あたしのお家……ローザリオン公爵家の『お世継ぎ』。


 とっても嬉しいことだけど。


 とっても……寂しいことも出来た。


 お母様が……弟、ディオスと。ずっと……ずーっと一緒だと言うことだ。


 お母様はあたしも好きって言ってくれるけど……ディオスが出来てからは、あんまり一緒になれないの。


 乳母はいるんだけど……お母様は出来たら、お母様がちゃんと育てたいって言うんだって。あたしの時もそうだったらしいけど……寂しいなあ。


 いつも大変そうだから……あたしは一緒に居ても邪魔だ。


 公爵家のれーじょーとして、お勉強はするけど……ほとんど一人。


 お父様もお仕事が大変だから……一緒には居られない。


 まあ、あたしも本当に『一人』じゃないけどね?



『みにゅ? ご主人様?』



 ディオスよりは、大きな赤ちゃんの精霊。


 あたしとそっくりの緑色の髪に、銀色のおっきなお目々。


 お母様の契約精霊の子供、ミアがあたしの契約精霊。


 ちょっと不思議な話し方をするけど……可愛いんだよね?



「んー。暇だなあって」


『おかち、作りに行きましゅ?』


「そーだねー」



 お母様の方がもっと凄いけど……あたしもちょこっとだけは、お菓子とかを作れる。料理長のシェトラスがいなきゃ大変なところがあるけど。


 お母様は凄いの。


 パンをすっごく美味しく作れるの。あたしは……大きくなってきてから、いつも食べれていたけど……他のお家とかだとまだまだ美味しいものが少ないんだって。


 お母様は、お祖父様がいらっしゃるお城でも教えられるくらい……凄い料理人でもあるんだよね? お父様はお母様のパンはいつもよく食べていたけど……ディオスが出来て、お父様もだけどあたしもパンはお預け。


 シェトラスとかのパンも美味しくないわけじゃないけど。



「リーシャぁ!」



 でも、今することがないのでシェトラスのいるちゅーぼーへ行こうとしたら。


 前からあたしを呼ぶ声が聞こえてきた。



「サリー姉!」



 と、サリー姉の後ろでビクビクしている男の子が一人。


 あっちは、お母様の親友の子供……で、伯爵家の坊ちゃんだ。名前は、ミラクル。


 サリー姉も伯爵家の子どもだけど、ミラクルのお姉ちゃんじゃない。


 どっちも、あたしの幼馴染み!



「やっほー! ミアもちょっとぶり」


『みにゅ!』



 サリー姉がミアに挨拶すると、ミアはコクコクって首を振ったわ。その返事にサリー姉はもっと笑顔になるけど……ミラクルの方はと言えば。



「こ……ちは」



 めちゃくちゃビビっているのよね?


 ずーっと一緒に居るのに、誰でもこんな感じだ。自分のお父様たちにもなんだけど。



「……ミラクル。ミアは怖くないよ?」


「……う、うん」



 あたしが大丈夫と言っても……サリー姉の後ろに隠れるばかり。本当に、しょうがない弟分だわ。一個しか違わないけど。



「ま、しょーがないわよ。今日、暇?」



 サリー姉も相変わらずなので、あたしは首を縦に振った。



「うん。ミアとお菓子作ろうと思って」


「私も手伝う!」


「いいの?」


「うん! ミラクルどーする?」


「…………い、く」



 と言うことで。


 暇じゃなくなったのが嬉しいから……みんなでちゅーぼーに突撃だ!!

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