新世代のマイノリティ
ボウガ
第1話
ある未来の東方、“キャラクター”文化が愛され、人間もそのように扱われていた。コンピューターとインターネットが発達した時代はもうとうにすぎさり、新たな時代がやってきた。アバターを介した仮想現実への没入。SF小説でかたられた電脳世界、メタバースの到来だ。
もともと相性のよくないからだと精神を持つもの。キャラクターがあわない人間はその文化で“救済”の対象となる。男女だけではなく自分の体と性格が一致しないものが、自分を救うために、整形手術といった方法ではなくアバターへ体を映すことでその生きづらさを軽減する流行も栄えた。
ある一つの悲しい事件が起こるまでは。
『優しい子だったのに』
『あんなに容姿端麗で』
『クラスのマドンナだった』
そう語る学校関係者の中に彼女のつらさを理解する人間はほとんどいなかった。少女は、自分の女らしくかわいらしく小さな身長を嫌い、強い女になりたいと願い続けていた。
メタバースにすぐはまったが、彼女の家は貧乏であり、月一回の彼女の大奮発は家計、いや彼女自身の一人暮らしを崩壊させた。彼女のいかりは、金持ちへと向かい、整形をできる人間たちに向いた。
その頃メタバースで人々が幸せな第二の世界をそれぞれもち、それぞれの居場所を現実のほかにもう一つ持つ時代にあって、整形手術はあまり必要とされず、それゆえにかかる値段はさらに高額になっていた。
彼女は、Aさんは、学校を襲撃する事件をおこした。もともと身分をいつわり、高額な学費がかかるお嬢様学校に無理やり入学した彼女にとって、周囲の金持ちへのステロタイプな怒りがあった。
『生まれが違うだけで、姿かたちが違うだけで、どうしてあなたたちだけが自由に生きられるのか』
そうしてナイフによる無差別襲撃事件がおきた。死人はでなかったが多くの重軽傷者をだし、それからその国のメタバースは、現実と大差のあるアバターの使用を禁止した。
牢屋にいる彼女の近頃のインタビューで彼女は自身の自由と不自由についてこう語る。
『生まれながらの体と心が合う存在は、私のような苦痛をもたない、私は強い女にあこがれていた、それが、周囲からはよかれとおもって、かわいく優しい女になれと“キャラクター”を要求されつづけた、だれもがそうなりたいわけじゃない、当たり前のことだとおもっていた』
新世代のマイノリティ ボウガ @yumieimaru
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