雲はゆく

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 空に浮かぶ雲がいた。


 真っ白でふわふわな雲。


 そんな雲には、仲の良いものがいた。

 それは風だった。


 風は、どこからかやってきた雲と遊ぶうちに、別れが寂しくなった。


「どこにも行かないで」


 そう言うけれど、雲はゆく。


「残念だけど、とどまる事はできないんだ」


 雲はゆく。


 とめられても。


 何かを言われても。


 雲はゆく。


 どこまでも遠くへゆく。


 なぜならそれが雲だから。


 雲とはそういうものなのだ。


 とどまらず、動き続けるもの。


 風は心配する。


「誰かに強制されてるの?」


 雲は否定する。


「大丈夫、違うよ」


 風はまだ心配する。


「もしかしてそうしないと不都合があるの?」


 雲は否定する。


「そうしなくても大丈夫だから、不都合なんてないよ」


 風は泣きそうになって、まだまだいかないでという。


「もしかしてここにいたくなくなったの?」


 それも雲は否定する。


「大好きな友達がいるここは、とても好きだよ。でも行きたいんだ。遠くへ、どこかへ」


 雲は答える。


「ぼくはそうしたいからそうしてるだけなんだ」


 雲はゆく。


 自由だから。


 自分であるから。


 自由で自分である限り、雲はゆく。


 どこまでもゆく。


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