冷たくなっても愛してる
四季秋葉
冷たくなっても愛してる
冷たい。それも、こっちまで一緒に凍えてしまうのではないかと思うほど。最初触れた時にそう思った。
つい数日前までは温かかったのに。
今、俺の目の前には俺が愛していたふりをしてた女が変わり果てた姿で冷たくなっている。
水を張った浴槽の中に、その女が浸かっている。服は着たまま。俺の好みだと言って贈った服と髪留めを付けている。メイクも俺の好みだ。
『綺麗だ』そう思ってしまった。 息をしていれば尚更。
紗耶は死んでいた。浴槽の中で手首を斬って。浴槽の水が鮮やかな紅に染まっている。そして、近くには手紙が置いてある。わざわざ濡れないところに置いてあった。封筒には『
自殺したんだ。
不思議と悲しみは無い。それどころか、次はどんな女のところに行こうかと考えている俺がいた。自分でも馬鹿なんじゃないかと思った。恋人が死んだにも関わらず、恋人の心配より自分のこれからについて、それも女について考える奴なんかどこの世界を探しても居ないだろう。
取り敢えず、警察に電話すればいいんだろうか。こんなケースは初めてでどうやって説明すればいいかも分からなかった。でも、これだけは分かる。きっと通報したら俺は警察の所にしばらく世話になるだろう。こういう場合は第一発見者が怪しいと思われるはずだからだ。
スマホを手に取り、取り敢えず110番に架ける。110番に電話なんて、生まれて初めてだ。
『事件ですか、事故ですか。何がありましたか?』
男性の声がする。恐らく、30代から40代位の歳だろう。
「恋人が、死んでいます」
どう言えばいいのか分からず、素直にこの状況を言うべきだと判断した。でも、向こうは特に焦った様子も戸惑った様子も無かった。
『何時発見しましたか?』
「数分前です」
『場所は何処ですか?』
「東京都○○区✕✕、□−□□−□□です」
『どんな状況ですか』
「浴槽の中で、左手首を斬ったみたいです」
とてもじゃないが、これ以上は話したくなかった。ふりだったとしても、俺の彼女だったんだ。余り深く話して良い気分にはなら無い。
『貴方の名前は?』
「
『分かりました。直ぐにパトカーと救急車を手配します』
「お願いします」
紗耶には、勿論だが言ったことがなかった。『お前は本当の彼女じゃなくて、偽りの彼女だ』なんて。そんな事を馬鹿正直に言える程、俺は優しくもないし、正直者でも罪悪感も無かった。それは今までも同じだった。いろんな女と遊んできたけど、罪悪感なんて感じたこと無かった。でも、今になって初めて罪悪感というのが分かった気がする。それが紗耶に対してなのか、死に直面したからなのかどちらか分からないが。改めて紗耶を見つめる。
丸いビー玉の様な瞳は瞼によって隠されていた。瞼には淡いピンク色のアイシャドウが塗られている。頬は、体温が高くなったときに淡く染まる自然な色に。薄く形が整っている唇は固く閉じていて、オレンジとピンクが混ざったような可愛らしいリップをしている。確か、このリップも俺があげたはずだ。服は、肩が出ている黒いワンピースを着ていた。初めて会った時にも思ったが、こうして見つめるとやっぱり綺麗だ。美人とか可愛いとかそんな顔立ちではなく、綺麗という言葉が一番しっくりくる、言葉では言い表せない美しさがあった。
「綺麗だよ。紗耶」
不思議と自然に出ていたことに驚いた。女に対して、『綺麗』なんて言葉にしたことないのに。
暫く驚いているとインターホンが鳴った。警察が来たんだろう。ドアを開ければ、数名の警官が立っている。
「園辺さんのお宅で間違いありませんか?」
「はい」
「貴方が通報した立花さんですね?」
「はい」
「じゃあ、家宅捜索と言う事で上がらせてもらいます」
「分かりました」
ぞろぞろと家の中に入ってくる警官を見ながら、『大変なんだな』と他人事のように思う。
邪魔にならないところに行こうと、場所を探していると「立花さん」と肩を叩かれたので後ろに振り返ると、2人の刑事の様な人物が俺を見ていた。
「立花さん、お話を聞きたいので署までご同行願います」
やっぱりか。でも、俺は何もしてない。別に無理矢理連れても大したことにはならない。
「はい。分かりました」
「では、こちらに」と2人の後ろを付いていく。玄関から出ようとしたとき、俺は紗耶の事を考えた。俺が居ない中で、大丈夫なのかと。後ろを振り返ってみても、紗耶は居ない。当たり前なんだが。
「立花さん?」
「……ああ、すみません」
少し急いで2人の後ろに追い付く。階段を降りていけば、野次馬達が群れていた。それもそのはず、こんな堂々とパトカーが数台停めてあれば、群がってくるもんだろう。群がってるのは大体が噂好きの奥様方だ。俺が出ていけば、こっちに視線が集まりだしざわめき始める。その中に、見覚えのある顔があった。その人はこっちを見つめ、不安そうにしている。『大丈夫です』という意味を込めて少し微笑めば、少しだけ安堵の表情を見せた。
誘導されるまま、生まれて初めてパトカーに乗った。座り心地は普通の車と同じ。特別感は特に無い。車が走り始めても、一言も会話がない。そうすると、段々飽きてきてしまう。過ぎ行く窓の外の景色を見れば、不思議とカップルが目に入る。そうすると、紗耶の事が思い浮かぶ。
紗耶と初めて会ったのは、今から約2年前の今と同じ夏の暑い日だった。その日は確か、二股してたのがバレて2人に同時に振られたんだっけ。しかも強烈なビンタをされて。その気晴らしにカフェに入って相席でもして、新しい女でも釣ろうと思って一番新しく出来た話題のカフェに入った。店員が「お好きな席に」と言ってくれたのが運が良かった。これだったら相席しても文句言われないと思ったから。やっぱり予想通り、女がうじゃうじゃ居た。席を探しながら『アリ』『ナシ』『アリ』と見定めていく。店内を彷徨いていれば、視線は俺の方に来る。こんなカフェなんかに、男が1人で来る方が珍しいと思うし。
それに何より、自分で言うのも何だが、俺は結構顔立ちが整ってると思う。目は切れ長で、左目の下には泣きぼくろがある。鼻は高いし、唇も大きすぎず厚すぎでもなく、形もいいと思う。全体的にバランスの良い配置だと思う。身長も182cmだし、髪も何時もバッチリセットしてる。服も流行りを意識してる。仕事だって、割と名の知れた会社に勤めて部署内でもノルマはトップだ。家事だって出来る。容姿端麗で、仕事も、家事も申し分無い。こんな男が居たら、女が放っておかない訳が無いだろう。俺が女だったら、間違い無く結婚まで持っていく。ここまで言えばもう分かると思うが、俺は相当なナルシストだ。自他共に認めてる。挙句の果てには呆れられる程。同僚には「お前の唯一の欠点はナルシストなところだ」とよく言われる。
周りの視線を無視しながらテラスまで歩いて行く。流石に店内じゃ落ち着かない。だがテラス席に行ったは良いが、今度は女が一人も居なければ、客が一人も居なかった。『テラスより中の方が良いか』と店内に戻ろうとした時だった。急に突風が吹いてきて、それと同時に白い女優帽が飛んできた。それを無視しても良かったが、その時は何故か突発的に取ってしまった。そうすると、「すみません」と女が小走りで来た。その女を見たとき、身体中に衝撃が走った。爪先から脳天にかけて雷に撃たれたような衝撃だった。暫く見つめて、俺は何もできずに居た。
「あの……?」
話しかけられて、ようやく意識が戻った。
「ああ、すみません。貴方の帽子ですか」
「そうです。有難うございました」
ふわりと微笑む彼女を見ると、舌がもつれた。今までこんなことなかったのに。
「いえ、良いんですよ」
俺も微笑めば彼女は頬を赤く染めた。
「あの、もし良かったら、相席しても良いですか?」
「え、はい。良いですよ。帽子を取ってくれたお礼です」
これが、俺と紗耶の出会いだった。
「立花さん」
そう呼ばれて、ようやく思い出した。警察署に向かってるんだった。初めて、署内に入って、取調室に入った。今日は、『生まれて初めて』が多い日だ。
「園辺さんとの関係は?」
取調室に入ってから直ぐに、単刀直入にいきなり聴いてくるとは流石に驚いた。
「恋人です」
「園辺さんが亡くなった心当たりは?」
「分かりません。不安とかがあるのか聞いても話したがらなかったので、何も」
「そうですか。じゃあ、今日園辺さんのお宅に行った理由は?」
「今日、行く約束をしてたんです。仕事が休みだったので」
「そうなんですか。園辺さんのご家族については?」
「彼女が7歳の時、事故で亡くなったと聞いています。兄弟も居ないと聞いてました」
「成る程」
「彼女の葬儀は、俺が行っても良いんでしょうか」
「はい? 構いませんが……」
「有難うございます」
「……今日は、有難うございました。取り調べはこれで終わります」
「あ……はい」
まさか、1時間もかからず帰れるとは。でも、取り調べで俺が言ったことは全部本当の事だった。嘘は一つも言ってない。
警察署から出て、俺はすぐに帰らずに繁華街に行った。少し気晴らしに遊ぼうと思ったからだ。暫く歩けば、あちこちから声がかけられる。
「お兄さん、うちのお店に寄ってかない?」
何時もなら迷わず行くところだが、今日は行く気にならなかった。そのまま、ぼーっとするようにあるき続けていると、会いたかった
「ねぇ、お姉さん」
「えぇ?」
そうやって、卑しい笑みを浮かべて振り返った女を見て、探してた
「あ、すみません。人違いでした」
そうやって少し微笑んで離れようとしたが、どうやら上手く行かないみたいだ。
「ちょっと、そっちから声掛けてきたんでしょ? お兄さんイケメンだし、ちょっと遊ぼうよ」
勝手に腕にしがみついてくる女を見て、嫌気が差す。今まで、女に嫌気が差すなんてことなかったのに。今日の俺は、何処かおかしいみたいだ。
「はぁ……ごめん、俺イケメンだからさ? 遊びたいのかもしれないけど、ブスは無理だから、腕放してくんね?」
「なっ……」
少し笑って言えば、女は固まって動かなくなった。この女も美人の部類だと思うが、卑しい人間は嫌いだ。それに、この反応を見る限りきっと「ブス」だなんて言われたことなかったんだろう。そのまま女は放って歩き出す。
「今日は、遊ぶ気がしねぇな……」
一人呟いて家に帰る。また、ぼーっとしながら歩いていたら、よく見慣れた道を通っていた。この角を曲がれば、紗耶の家だ。自分でも知らないうちに紗耶のところに来てしまったらしい。
どうやら家宅捜索とやらは終わったらしい。少し迷って、紗耶の家のドアノブに手を掛ける。当たり前だが鍵がかかって開かなかった。笑いが込み上げてきた。こんな馬鹿な事をして、何になるんだろう。
「立花君?」
よく知った声が、後から聞こえた。
「あ、どうも」
「大丈夫だった?」
そう優しく声をかけてきたのは、紗耶の家の管理人の
「はい。全然」
「嘘でしょ? 平気そうに見えないわ。紗耶ちゃんの事もあったし……紗耶ちゃんの部屋に入る? 入っても良いって言ってたわ」
「あ、じゃあ、入ります」
そうすると佐野さんは、まるで俺が最初から入るとでも予想していたかのように、直ぐに鍵を取り出して開けてくれた。
「鍵は渡しておくわ。帰るときはポストの中に入れておいてもらえれば良いから」
それだけ言うと帰っていってしまった。このままじっとしていても仕方がない。そう思い、俺は紗耶の部屋に入った。
部屋の中は静かだった。まあ、当たり前のことなんだが。一番先に浴槽へ向かう。やはり、紗耶の遺体は無かった。それに、手紙も無かった。こんなことであれば、先に手紙を読めばよかった。
部屋の中には、普段と変わらない物が置いてあった。紗耶は何時も、服をハンガーに掛けていた。タンスの中から探すのは時間が無駄だからって言ってたな。小さな鏡台の前には、俺が紗耶に贈ったアクセサリーが置いてあった。指輪も、ネックレスも、ブレスレットも。何時もだったらアクセサリーボックスに入れてあるのに。ふと、写真に目が行った。俺と紗耶のツーショット。この写真は付き合って1周年の記念日に、夜景を観に行ったときの帰りに撮った写真だ。この日は、一晩中色んな夜景を観に回ってドライブしたな。それで結局観に回ってたら朝方になってて、朝焼けと海をバックに写真を撮ったんだっけ。そこで気付いた。普段生活してて、こんな細かいところまで俺は見ていたんだっけ。何気なく紗耶の部屋に行って、細々と色んな所を見てたんだろうか。
「やっぱり帰るか」
そう呟いて、俺は紗耶の部屋を後にした。
ようやく俺の家に帰る、その途中でもずっと俺は紗耶との思い出を振り返っていた。色んな女と遊んできたけど、別れた女との思い出なんて振り返ったこともなければ、忘れてることが多かったのに。紗耶との事は、信じられないぐらい覚えている。
家に着いたとき、俺は何を思ったのかポストを確認した。俺に手紙なんて届くはずもないのに。でも、今日は手紙が届いていた。それも、差出人は死んだはずの紗耶から。
高校を卒業してもう7年、ろくに運動をしてなかったからか、少し走っただけで息が切れてしまった。家に入って、リビングまで行くのも待てずに玄関でその手紙を読み始めた。
『理玖くんへ』
相変わらずな綺麗な文字で始まっていた。
『急にごめんね。きっとこの手紙が届いてる頃、私は死んでると思います。理玖くん驚いたかな? 驚いてないかな。理玖くんは現実的な人だから、きっと私の死体を見たら警察に電話するだろうなって思って、理玖くんだけが見れるようにこうして手紙を送りました。私が死んだ理由なんだけどね、疲れちゃったの。色んな事に。特に仕事。私ね、ずっと虐められてたの。「どうして理玖くんと付き合ってるんだ」とか、そう言われて。でも、私は気にしてなかった。だって理玖くんの彼女は私だもん。それに、私知ってたよ。最初は私の事遊びで付き合ってたって事。理玖くんは隠してたみたいだけど、聞いちゃったの。電話してる所。会社の人と話してたね「紗耶は遊びの女だ」って、それ聞いたときショックで泣きそうだった。でも、その後「悪くない」って言ってたね。一緒に過ごすことが多くなって、私知ったの理玖くんの「悪くない」は「好きだ」って意味なんだって。だって、私が作った唐揚げ食べたとき「悪くない」って言ってたもんね。それにその数日後には「唐揚げはもう作らないのか」って聞いてきたもんね。あれは可愛かった笑。私はね理玖くんと一緒に居たすべての時間が宝物だったよ。本当は、死にたくなかった。理玖くんと生きていきたかった。結婚して、子供を産んで、家族になるの。それが私の夢だった。今まで幸せなんて知らなかったけど、理玖くんと一緒に居る時間っていうのが幸せだって知ったの。だから、一緒に死ぬまで居たかった。でも、会社の人に言われたの「理玖くんと別れないと、理玖くんを殺す」って。そんなのありえないって思った。理玖くんは死ぬ訳ないって。でも、親の事があったから怖くなったの。だから、それぐらいだったら死んだほうが良いかもって思ったの。でも、凄く後悔するなって思った。だって理玖くんを置いて行っちゃうんだもん。でも、私はもう決めたよ。理玖くん、大好きだった。愛してたよ。もし、来世があったら、二人で幸せになろうね。約束だからね。どんな姿になったとしても、必ず理玖くんを見つけに行くよ』
「……紗耶……」
所々、涙で濡れたと思われる場所があった。この手紙を読んで、今日俺がおかしかった理由が分かった。
俺は、紗耶の事を愛していたんだ。それも残酷な程深く愛していたみたいだ。紗耶と会って、紗耶と過ごして、初めて愛情を知った。
そうすると、俺はずっと愛に飢えてきたのかもしれない。いや、きっとそうだったんだ。それと同時に、初めて親父が言っていたことを理解した。
俺の家は、父子家庭だった。お袋は俺を産んだと同時に亡くなったらしい。そのまま、俺は親父に男手一つで育てられた。でも、俺は愛情は注いでもらえなかった。愛情を注がれるのは、毎回親父が連れて来た女だけだった。それをずっと見続けてきたからなのかもしれない、今の俺が出来たのは。一度だけ、親父に聞いたことがあった。「どうして、そんなに色んな女と遊ぶのに再婚しないんだ」と。
そしたら「俺が生涯愛し続けるのは、母さんだけだと誓ったんだ。だから、他の女にその愛情を向けることはない。これからどんなことがあってもな。お前は、俺のことを見て育ってきたから将来はろくでもない男になるだろう。俺も子供の時からそうだったからな……でも、きっとお前も分かるようになるさ。お前のことをただひたすらに愛してくれる女が必ず現れる。その時、お前は愛情というものを初めて知るだろう」
そう言った数日後、親父は死んだ。女に刺されて。ろくでもない死に方だ。きっと俺もろくでもない死に方をするだろうと思って生きてきた。ほんとに、馬鹿みたいな死に方を俺もしようとしている。心は、もう決まった。
俺が住んでたのがマンションで良かった。他の場所を探すのは面倒だから。やることは済ましてきた。メモは家の中のテーブルの上に置いてきた。鍵は開けっ放しにしたし。
不思議と、死ぬことに抵抗はなかった。ずっと心に紗耶を思ったからだろうか。もう、未練も何もない。
フェンスを乗り越えようと歩き出したところで、ぐちゃっという音がした。なんの音か振り返ろうとしたとき、腹部に激痛が走った。
「う゛っ……げほっ」
口の中に鉄の味が広がる。
目の前を見ると、佐野さんが立っていた。包丁を持って。
「立花君、貴方のことが憎いわ。貴方のお父さんの事も、紗耶ちゃんの事も。貴方が全ての罪を償って頂戴」
そう言って去っていく佐野さんを、ただ見ることしかできなった。でも、好都合だ。俺のことをわざわざ殺してくれたんだから。でも、まさか親父と同じ死に方をするとは。やっぱり、親子は似るんだろうか。
佐野さんは、親父の女だった。しかも不倫をしていた。佐野さんは旦那さんを捨てて親父と一緒になりたかったみたいだが、親父はそんな気は無かった。それに責任も取らなかった。そのまま佐野さんは旦那さんと離婚して、親父とも縁を切ったみたいだったが、まさかまだ恨んでいたとは。もしかしたら、親父を殺したのも彼女なのかもしれない。そうも思った。
意識が朦朧としてくる。もう、そろそろ死ぬんだろう。最後に、紗耶に会いたかった。死体でも良いから、会いたい。紗耶の冷たい身体に触れた時、いや、初めて会った時から、俺は紗耶の事を愛していたんだ。今でもこの手に残ってる。温かかった紗耶の温度と、冷えきった温度を。俺は、どんな変わり果てた姿だったとしても、たとえその身体が冷え切っていたとしても愛してる。
「紗耶……愛してる……」
◆
「
◆
『紗耶へ、気づかなくてごめん。俺、初めて愛情を知ったよ。君のお陰でね。ありがとう。初めて言うけど、愛してたよ。心からね。俺も、紗耶の後を追うことにしたよ。もし会えたら、二人で色んな所回ろうか。新婚旅行でもしようよ。もし、来世があるなら、俺は初めから愛情を知ってる上で紗耶に会いたいな。その時俺は、今世では言えなかった分愛情を伝えるよ。心から愛してる。今も、来世でも、この世界が続く限り』
冷たくなっても愛してる 四季秋葉 @new-wold
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