第45話 ろう文化(生活習慣)
先日のこと、仕事場で上司から怒られてしまいました。
「元橋くん。人と話すときに、指を差すのは失礼だぞ!」
全く意識していませんでした。注意されたときは、私の会話が終わった後だったので、「私、本当に指を差していたの?」
という感じです。
最近かなり集中して、手話の勉強をしていたからかもしれません。
『日本語対応手話』では、そうでもないのですが。『日本手話』では指を差す事が、かなり多いような気がします。
自分、相手、そこにいない人物や場所。とにかく指を差します。文章が長くなると、終わりにもう一度、指を差します。
ですが、考えてみると『聞こえる人』は、指を差しませんね。
手話に慣れてくると、逆にそれが不思議です。そもそも、なんで指差すことが、失礼なのでしょうか。
ろう文化の一つに『目と目を見て話す』というのがあります。
「話すときは、人の目を見て話せ!」などと、学生時代はよく言われたものですが、ろう者からすると、聞こえる人は『目を見て話さない』ので困ります。
相手の目を見ないと、誰に言っているのかわかりません。他にも、話が続いているのか、疑問文なのか、目(とその周り)から伝わる情報は、『聞こえる人』が思っているより多いのです。
他にも、ろう文化は沢山あります。
例えば、人を呼ぶとき、素早く手招きしたり、振ったりしますね。あと、見えない位置なら、軽く触れたり。下が床なら、足踏みの震動で気付かせたり。
照明を点滅させて呼ぶのは、知っている方がいるかもしれません。
今では、ほとんどありませんが、ドアを開けたまま固定しておく事もありました。
扉が開いていたら『中に人がいるので、どうぞ』(インターホンやノックは聞こえないので)という、いまでは信じられないような、ろう文化です。
これ、実は逆も言えることなんですよね。
『ろう者ならではの文化』が、ろう文化。
『聴者ならではの文化』は、聴文化?
お互いに『それは違う』『常識がない』『失礼』と感じるのは、知らないからです。
ろう文化、調べてみるのも面白いですよ。
ろう者の方と手話をすると、あまりにもストレートな言い方に驚くことがあります。
『太ったね』とか。
食事を誘うときでも「いつか食事に行きましょう」なんて言いません。『来週、食事に行きましょう』と、ものスゴく具体的です。
ウソや取り繕いが少ないというか、正直と言うべきか。
これも、ろう文化らしいです。
ろう者のコミュニティーで生活すると「まるで外国に来たみたいだった」と言う人がいますが、まさにそれが答えなのかもしれません。
生まれた場所は、同じ日本だとしても、与えられた環境や、文化が違います。
なのに、無理矢理どちらか一方の考えだけを押しつけようとして、上手く行くわけがないのです。無理を通せば争いが起きます。
ただ、忘れてはならないのは、環境や文化、国や考え方が違っても、『同じ人間』だということ。
どちらが上とか下とか、そう言うことではなく、互いの文化を理解し、出来ることなら楽しんでみようではありませんか。
わかってみると、面白かったり、自分の生活に取り入れられるものも、あるかもしれません。
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