第16話 マザーズ・ヴィンヤード島

 アメリカのボストンの南の島、マザーズ・ヴィンヤード島。

 そこでは20世紀初頭まで、聞こえる聞こえないにかかわらず、誰もがごく普通に手話を使って話していたそうです。


 最初に、その島の存在を聞いて、何か作り物の話の設定なのかと思いました。

 あまりにも普通に、手話を使うので、後の聞き取り調査では、誰が『ろう者』か『聴者』か、わからないという答えが多かったといいます。

 なるほど、あまりにも当たり前になっていることは、意識をしないものです。普段から、手話を使いながら話をしていたのなら、そうなるのでしょう。

 考えれば考えるほど、重みすら感じてしまいます。


 コミュニケーションに困らないため、誰もが好きな仕事をすることが出来たようです。

『聞こえる、聞こえない』で、所得差は全くありませんでした。

 資料によると、ろう者の中には、かなり裕福な人もいたそうです。

 結婚に関しても差別はありませんでした。ろう者だからと反対されたというような資料も、島民からの証言もありません。

 何も弊害はなかったのです。

 なぜ、このような島が出来たのかと言えば、島という閉鎖環境に、一般的な割合より多くの『ろう者』が住んでいたからでした。


 ろう者に対して、差別のない共生社会が、確かにそこにありました。

 その一方で、日本の現状を考えると、切なくもあり、差別のない世界は遥か先だと感じてしまうのです。

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