第11話 0122村

「てつだって!」

 女の子に言われて、わたしは青年に駆けよりました。

 ちょうど女の子が、青年の手のロープを切って、自由にしたところでした。わたしが支えなかったら、青年は顔から地面へ倒れていたことでしょう。

 女の子は、さらに足のロープを切ります。

 自由になった青年を、その場に横たえました。

「この人、ウソをついた罪で、死罪だって書いてあるけど」

「……死んでる」

 女の子の言葉に、わたしは驚きませんでした。自分でも、おかしいと感じるくらいに冷静です。

 それは、青年の体を抱えたとき、あまりにも軽くて、生きていないことがわかっていたからでしょうか。

「ねぇ、これ」

 女の子が、青年の左胸を指差します。

 紺色のシャツの左胸の部分に、四角い布が縫い付けられていました。きっと名札なのでしょう。

『マコト』

 これは偶然でしょうか?

 親切な老夫婦が『0122村』に着いたら、たずねるように言った人の名前が、同じ『マコト』です。

 女の子に肩を叩かれて顔を上げると、今度は道の先の方を指差していました。

 そこには、なぜいままで気がつかなかったのか、不思議になるくらい大きな看板があったのです。

『0122村』と、大きく太い文字で書かれていました。

 0122村……0122……どこか覚えのある数字でしたが、思いだせません。

「いきましょう」

 女の子が、静かに言います。

「この人は?」

 わたしが青年へ視線を向けながら言うと、女の子は答えたのでした。

「うめる道具もないし、どうにもならないわ。時間もないし」

?」

 女の子が歩き出したので、わたしも後に続きました。

 青年の遺体を、その場に残して。


『0122村』へ入るためには、入口の小屋で手続きをとらなければならないようでした。

 といっても塀で囲まれているわけではないので、通り抜けるだけなら、手続きの必要はなさそうです。

 ただ、わたしたちは通り過ぎる気にはなりませんでした。

 村の外で亡くなっていた『マコト』のことが、どうしても気になったのです。

 あの親切な老夫婦の知り合いの『マコト』だとしたら、なぜ死ななければならなかったのでしょう?

 命に関わるウソというのは、何なのでしょうか?


『0122村』へ入る手続きは、意外と簡単なものでした。

『ウソは罪です。

 ウソをついた場合は、たとえ旅人であっても罰せられます。』

 そんな文章に、サインをするだけでした。

 わたしは『ワタシ』と、女の子は『アナタ』とサインしましたが、何も言われませんでした。

 サインした書類を受け取った人は、ニコニコしています。そんな人に、とても聞きにくかったのですが、わたしは言いました。

「外でハリツケにされていた青年のことを、知っている人はいますか? マコトという人なんですが」

「それなら村長に聞きなさい」

 その人は、ニコニコしたまま言いました。

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