第11話 レース序盤から中盤

 号砲一発。


 マラソンレースが始まった。


 みんなは勢いよく走り出す。僕も流れに任せてスタートを切る。すぐ前には友達とふざけあって余裕を振りまきながら走るヤマモトモウタがいる。僕はうつむき加減に首の角度を固定すると、自分のペースを守ったまま走り続けた。


 校庭を一周して、体育館の横を通過し、裏門から学校の外へ出る。僕はそこで顔を上げ、自分の順位を確認してみた。


 ──誰もいない。僕の前には……誰も。


(そんなばかな……)


 つまり僕は先頭を走っていたのです。


(ふつうに走ってるだけなのに……どうしてだ……)


 たしかに僕は、毎日、公園でピッチング練習前にウォーミングアップとして公園内をジョギングしてはいる。でも、その程度のことで急に僕の走力がアップするとは思えない。ただ単にみんなが後半に備えて体力を温存しているだけだろう。そんな風にこの状況を整理して落ち着きを取り戻し、そのままのペースで走り続けた。

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