貴女なしには
緩洲えむ
第1話
あの子の自信たっぷりな、生意気な態度が気に入らなくて、何度も振ってやったものよ。強がって怒ってたのが、最後は跪いて、ごめんなさい捨てないでくださいと泣いたあの坊やが、今やいっぱしのお医者、それもアカデミー出の秀才だの、大病院の総長だの言われていい気になって、可笑しいったらないわね。頭が良かったのは確かよ、でも詩の一つも捧げてこない不粋者で、あれはきっと失敗して笑われるのが嫌だったんだわ。プライドだけは一人前……いいえそうでもないわね、あの子の泣き顔を見ても嬉しくも何ともない。生きる為なら身体を売るのも何とも思ってなかった。物乞いをしてどろどろに腐った野菜を地面に放られて、食えと言われて本当に食ったんですって。それがわたくしの足元に跪いて、衣の裾に触らせてくださいですって。普段高慢で、人を馬鹿にして楽しんでる輩が、本当無様、惨めったらしいったらないわ。綺麗な顔をわざと泥で汚してみせるの。金に物言わせる奴らと同類にされたみたいでわたくしの方のプライドが傷ついた。でも、それだけわたくしに嫌われるのが怖かったのよ。あの子本当は単純だから、それくらいわかる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます