2章 覚醒

31 『喰らいし者』


(※ユウ視点)


「ほらユウ、私の胸を触れ!」

「にゃ~、みゃーといっぱいキスをするにゃ~」

「ユウ、好きよ、愛してる」

「ふはははっ!」


 どこか豪華絢爛な部屋、大きなベッドの上に俺はいる。

 目の前に広がる光景は何とも言い難い。全裸の俺に、全裸の三人の女の子。

 右隣にシスティア――シシィが俺の手を取り自らの豊満な胸に置く。

 左隣にはサキュバス――マーニャが俺の首筋に唇の跡をどんどんと付けていく。

 真ん中にはエリィが正面から俺に抱き着くような格好。

 そして俺は、そんな美女たちに高笑いしている。

 なんて光景だ。素晴らしい、素晴らしすぎる。

 これが俺の理想、理想すぎる光景だ。

 もはやこれは夢なのだろうか?

 頬をつねってみる。痛くない。

 やはり夢だった。

 え? 夢? これって現実じゃないのか?


「ふ、まぁいいか……ふっははははは!」


 なら夢の中では何をしてもいいだろう?

 夢の中では俺が王様だ。王様なことを色々しまくってやるぜ!


『楽しそうな事をしているな、小僧』

「誰だ!?」


 突然声が聞こえてきて、目の前が真っ暗になる。豪華絢爛な部屋、大きなベッドも消えて、そして両脇、正面にいた女性三人の姿もなくなる。


「シシィ! マーニャ! エリィ!」


 見えなくなった女性に声を掛けるも、返事がない。


『それがお前の願望か? 悪くはない。英雄色を好むというからな?』

「お前は何者だ?」


 声に問いかける。

 夢とはいえ、いきなり俺の楽しみの邪魔をしてくれて、かなり頭に来ている。


『今は『喰らいし者』の魂に憑依する者、とだけ言っておこう』

「『喰らいし者』?」

『そうだ、お前は『喰らいし者』だ! そしてこれから多くの混沌に巻き込まれるだろう』

「いったいなんなんだよ、『喰らいし者』って!?」

『サキュバスがお前の元に来たのも、その力が目覚めた切っ掛けだろう』

「だ、か、ら――」

『今のうちに良い夢を見ておくんだな! そのうち夢を見る余裕も無くなるからな!』


 そして声が聞こえなくなった。

 あるのは真っ暗な闇だけ。


「そんなのはいいから、早く三人を元に戻して、さっきの続きをさせてくれ!」


 だけど、俺の願いの叫びは、暗闇の中に空しく響くだけだった。



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