幕間1 レッツ・エクササイズ!


(※エリィ視点)


「ふぅー、疲れた……」


 行方不明事件が解決して、数日経った。

 仕事を終えたあたしは、自分の部屋のベッドの上でくつろいでいた。


「まったく……あいつは……」


 あたしは不満だった。

 あいつの部屋にあの元はぐれ魔人族のサキュバスが居ついてしまったからだ。

 あのサキュバスは、先日の行方不明事件の実行犯。そんな奴が、何のお咎めもなしに、しかもユウの部屋に居ついてしまったのだ。

 そして、なんとあの姫様もちゃっかりユウの部屋に転がり込んだ。

 なんなんだ、あいつらは。あたしだけ蚊帳の外か!

 

 ――いや、なぜあたしがこんな思いをしなきゃいけないんだ。


「はぁー、まぁいいか」


 あたしはとある雑誌を取り出し、ベッドから立ち上がる。そしてあるページを開く。

 そのページの見出しにはこう書かれていた。


『バストアップ・エクササイズ ~これでみんなもおっぱいバインバイン~』


 なんて頭の悪いネーミングセンスだろう。ため息が出る。

 それでも実践してしまうから質が悪い。


 両手で胸を寄せて、広げる。寄せて、広げる……。


 なんだかバカみたいだ。こんなところ同僚なんかに見られたら、特にあいつに見られたりでもしたら、あたしは死ねる自信がある。

 でもあいつに言い寄る女たちは、みんな胸がバインバインだ。

 バインバインのバインバインだ。

 おっぱい星人のあいつに好みの胸ばかりだ。だから負けたくない。

 まぁ、もう負けたようなものだけど……。

 そう、あいつにはもう決まった相手がいる。

 

 それでもなぜかあいつの傍には新しい女が引っ付いてきた。

 あの元はぐれ魔人族のサキュバスだ。彼女はそんなユウの懐に堂々と入り込んでしまった。

 ユウもなんだかんだで甘い。そのサキュバスに居場所を与えてしまった。

 だからあたしにもチャンスがあるはずだ。恋人とは言わなくも、最悪愛人でも……いや、あたしのプライドがそれを許さないか……。

 とにかくあいつの懐に入れる隙があるかもしれない。

 あのサキュバスを不満に思っていたが、彼女の存在にあたしにも、あいつの傍にいられるという希望が見えたことに感謝していた。


 ――いや、待て。それってあたしはあいつのことが……みたいじゃないか。

 そんなのはありえない。あたしは認めない。あいつはただの同僚だ。そんな関係じゃない!


「……あぁー、もうわけわかんない! お風呂に入ろう」


 運動を終えたあたしは、部屋から出ようとした時、ドアについてる郵便受けに手紙が入っていることに気づいた。


「なんだろう……」


 送り主を見る。


『ユーシス・ブラック』


 兄からだった。

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