お前に逢いたい

片眼の兎

第1話

一寸先も見えぬ荒れ狂う吹雪の中を

這うように進んでいく

手足の感覚は遠の昔に無くなった

頬は凍りつき

鼻は黒くなり肉が崩れた

耳は何処かで落とした

今ごろ動物の餌にでもなっている事だろう

逢えぬのか

逢えぬのか

ますます吹雪が強くなる


突然

吹雪よりも白く

氷よりも透き通った美しい女が現れる


来てはならぬと言ったのに


そう言う女の口元は微かに笑っていた


夫になりますか


女の問いかけに男は薄れゆく意識の中で頷く


お雪

俺は

ずっとお前一緒にいたい


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お前に逢いたい 片眼の兎 @katameno-usagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る