捨てられなかった手紙

夕日ゆうや

捨てられなかった手紙

 彼女の墓前でアイドルとしてスカウトを受けた俺は、家に帰宅していた。

 その家の中に入ると彼女の部屋、その机の上を見やる。

 捨てられなかった手紙が置いてあった。

 悪いとは思いつつも気になり、読んでみた。


『ラオウくんへ

 責任感の強い君だからこそ、わたしの死を思ってくれていると想います。

 でもわたしは子役をやっていたときから頑張って生きている姿に心うたれました。

 そんなラオウくんがこれからの時代をどう彩っていくのか、とても興味があります。

 わたしのせいにしないで、どうか心のままに。

                      ――涼宮朱里』


 俺は何度も読み返した。

 でも涙が止まらなかった。

 最後の最後まで俺のことを思っていてくれたのだ。

 それがたまらなく嬉しい。たまらなく悲しい。

 俺にはそんな覚悟もなく、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

 虹の向こう側に行ってしまった朱里あかりを、俺はただ呆けているしかできなかった。

 わたしのせい、その通りだ。

 俺は彼女のせいにして自分の人生を投げ出すところだった。

 でもそれが彼女の望みじゃないと知った。

「俺、頑張るよ」

 彼女の部屋でそう呟く俺は、少し歩いてみようと思った。

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捨てられなかった手紙 夕日ゆうや @PT03wing

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