六十三日目

 六月も下旬になった頃。

 今日は球技大会が行われた。好天に恵まれ、全校生徒が学校のあちこちで火花を散らしていたのだ。

 そんな俺は天気なんて関係なく、体育館でバスケの試合に出ていた。くじ運悪く初戦から三年生と当たってしまい早々と散ったのは言うまでもない。

 だけど、俺個人で見ればかなり好成績だったのではなかろうか。


「本当ならあのコートで俺が活躍していたんだけどなあ」

「まぐれで点を取ったぐらいで調子に乗るな」

「十点以上もまぐれで取れるわけないだろ。本職のバスケ部こそいないけど運動部の人たちばっかだったし」


 体育館の二階席で隣に新発田を置いて、勝ち進んだクラスたちの試合を眺めていた。応援といっても知り合いがいるわけでもないので暇を持て余している。


「運動部と言えば、お前部活は入ったのか? 前に化学部の丹生さんが勧誘に来てたけど」

「えっ、あっ、や、やめろ……。頭が割れる……」

「一体お前の身に何があったんだよ」


 忘れようとしていた記憶を掘り返されて拒絶反応が起こった。未だに丹生さんの名前を聞くと震えてしまう。

 でも、彼女と少し話をして意気投合までは行かないにしても、たまにすれ違えば挨拶をする程度の仲にはなった。何かの実験道具にされそうになったら彼女の弟の話をすれば良いと知れたのは僥倖である。しかし、その反応があまりにも可哀想なので多用はできないが。

 ブザー音が響く。勝ったクラスと負けたクラスが分かれ、見ている側も一区切りがついた。


「そろそろ女子のソフトボールの決勝が始まるんじゃないか? 行くか?」

「んー、日差しで暑いからなあ。お肌が焼けちゃう」

「お前の脳は茹で上がってるけどな」


 失礼な奴だ。

 勝ったクラスが喜びの舞を踊っている。俺も来年はあそこで躍動しよう。

 でもやっぱり可愛い彼女に応援されてプレイしたいものだ。男女混合にしてもらっても構わない。そのためには可愛いクラスメイトが――、いや、今のクラスの女子たちに不満を持っているわけではない。と、自らの思考を律する。

 そこへ、


「あっ、いた」


 周りにいる他の生徒たちがざわつくのを他所に、声の主は真っ直ぐ俺の方へやってきた。


「キミの試合観てたよ。ただの女たらしだと思っていたけどバスケ上手いんだね」


 運動部らしい爽やかな笑顔で称えてくれたのは、本職であるバスケ部、そのエースの比叡梓であった。

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