魔法のプログラム
あに
第1話 超越者
「…………ぁ」
俺は死んだんじゃないのか……なぜ?
「起きたみたいだね。話せるかい?」
「ぁあ……な」
白い箱部屋で何も分からない。
「君が第六の欲、超越する欲を欲したからこの部屋に来た」
「第六の……」
欲求五段解説というのがある。
一段階目は睡眠欲や食欲。生きるために必要な欲。
二段、三段と欲の度合いは増していき、最終的にあるべき自分になりたいと言う自己実現欲求になる。これが第五欲求。
第六の欲は自己超越。
「俺がそんなもん望んだか?」
「望んでたね。そのための努力もしてた」
努力はした。自分はまだまだだから。
「そして最終的に僕のところまで来てしまった。人間としては凄いことだよ」
「自分の限界まで来たと言うことか」
「違うね、自分の限界を超越したんだよ」
言ってる意味がよく分からない。超えたらここに来たってことか?
「人間の可能性を超えたんだ。危ないから地球にはいられないけどね」
「えーと、つまり?」
「異なる世界、異世界に行ってもらうことになる」
「はぁ?死んだんじゃ無いなら返してくれよ」
「それは無理、大丈夫、君は人間を超越した存在だからね」
「いや、大丈夫じゃ無いでしょ?」
話を聞かない人だ。
「君には魔力、第六の能力がある。最高の能力さ」
「いやいや、魔力なんてないし日本に帰してください」
「だからそれは無理、今から送る場所は大気中にナノマシンが溢れている現代より進んだ世界だ。そこなら魔力を誤魔化せるからね」
大気中にナノマシンってどんだけ怖い世界だよ。
「怖がらなくていい、ナノマシンは無害だ。ある指令を受けるまで漂っているだけ。まぁその世界の住人も知らないけどね」
「いや、普通に怖いわ」
白の箱部屋でずっと独り言を言っている状態だ。
「じゃあ行ってもらう前に僕からプレゼントをあげるよ」
「どーせ帰れないなら貰っとくよ」
身体の中に何かが入ってくる。
「ステータスを見れるようにしといたよ」
「ゲーム感覚だな」
「そうだね、ゲームか」
「何が目的だ?」
「最終的には君が第六の欲を超越して神になるまでかな?」
神になる?
「俺はそんなこと望んで無い」
「人間の欲望は際限なく、果てしない」
「それは認める。だが神になりたいとは思わない」
「なれば好きに生きれば」
「あー、はいはい」
「素が出ているぞ?」
「こっちの方が楽だし、聞くのも飽きた」
どうせ自分勝手な神みたいだしな。
「そうか、第六の欲望を使いこなせよ」
「へいへい、精進しますよ」
「ではいっておいで」
気付いたら森の中にいた。
身体の中に何かが入り込む気分が悪くなる。すぐ慣れたがこれがナノマシンなのか?
「まずは飲み水」
ギュルっと音がして目の前に水の球が浮き上がる。
「は、はは、便利だな」
あらかた試してみたが火、水、土、風は動かせることが分かった。
「これがナノマシンが起こす現象か?」
火になり水を生み出し土を動かし風を吹かせる。
「魔法ってのが分からないな」
ステータスと念じると画面が出てくる。よくある半透明のホログラムのようだ。
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二十歳
筋力 A
体力 A
精神力 A
瞬発力 A
魔力 A
スキル 創造魔法
超越者
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なんだよこれ。オールAか。さすが超越者ってそもそもがわからないからな。
落大者の俺が超越者ってのがまず分からん。俺は今まで何不自由なく育てられ、なんでも出来た。医学部にも普通に入れると思っていたのに落ちた。少し落ち込んだがまぁ今までが出来すぎなのだろうと思ったよ。
第五欲望のことも少しだけ知っている。
第一が生理的欲求、第二が安全欲求、第三が社会的欲求、第四が承認欲求、第五が自己実現欲求。第六があるなんて知らなかったな。まず自己実現なんて…こんなもんだろうくらいにしか思ってなかったし。まぁ、いいや、ここで暮らして行かないといけないんだからな。
見渡す限り森だが、なぜこんな所に俺を置いたんだ?
「まず安全の確保だな。刃物が欲しいな」
身体から何か抜ける気分がするとそこには鉈が出来ていた。
「便利な世界だ」
でもいまのはナノマシンじゃなくて魔法なのだろう。
「魔法も便利だな」
鉈を持ちそこらの草木を見てみる。日本じゃ見ない草だと思うと、『薬草』と出て来た。他のも見てみるとその名前が出てくる。
鑑定という奴か。
ならアイテムボックスとやらも出来るのか?
「出来るもんだな」
薬草なんかを取ってアイテムボックスに入れていく。
早いとこ寝床と食料の確保をしないとな。
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