【ゴブリンズ・ホテル】

タヌキング

ゴブリン達のホテル

どうもゴブリンズ・ホテルの支配人のマイケルと言います。

当ゴブリンズ・ホテルはゴブリンの森の奥にあり、クラシック調の5階建てのレトロなホテルとして、いらっしゃった冒険者様達の憩いの場となるべく、スタッフ一同日夜努力をさせてもらっています。

ゴブリンズ・ホテルは源泉掛け流しの温泉(サウナ付き)、ビリアード、卓球、ボーリング、ダーツといった娯楽施設、地方の銘酒を楽しめるBAR、屋上で天体観測もすることも出来て、来られたお客様も大変満足して・・・。


「支配人!!助けてください!!」


おっと何らやトラブルのようです。受付嬢のリンちゃんが駆け寄ってきました。


「どうしたのリンちゃん?あとお客様も居るんだから不用意に大声を出さないように。」


「す、すいません、で、でも、受付でとんでもないクレームを言ってくるお客様が居られまして。」


「ほぉ、すぐに行きましょう。」


ゴブリンズ・ホテルはお客様第一をモットーにしていますが、極希に些細な行き違いでお客様と揉めることもあります。こういう場合、支配人としての私の度量が試されるわけでございます。


受付に着くと、そこには露出の高い赤いビキニアーマーを着た、黒い髪のポニーテールの眉目秀麗な美人のお客様が立っておりました。

背中に大斧も背負っているので戦士職だとお見受け出来ますが、それにしたってビキニアーマーとは、随分と懐かし物を見ました。目のやり場に困りますね。


「あっ、アンタが支配人!?」


「左様でございます。私は支配人のマイケルです。」


私はペコリとお辞儀をして


「どうなってるのよ!?このホテルは!!」


「当ホテルに何かご不満でもございますか?」


「不満も不満!!大不満よ!!ムキー!!」


女戦士様は大変ご立腹なようで、鼻息荒く怒っておいでです。一体何がご不満なのでしょう?


「あの、差し支えなければ何がご不満なのか教えて頂きたいのですが。」


「アンタそんなことも解らないの!!・・・いいわ、教えてあげる!!それはね、こんな肉感的な美女女戦士がノコノコやってきたのに、ゴブリン達が誰も襲いに来ないことよ!!」


「・・・はい?」


今まで数限りないクレームを申し使ってきましたが、これは初めての経験ですね。


「すいませんが、どういう意味なのでしょうか?」


「だから、こんなヨダレが出そうなぐらい良い女が来てるのに、ゴブリン達が襲い掛かって来ないのはおかしいでしょ?ゴブリンって言ったら美女を犯しに来るのが相場が決まってるのよ!!」


「あ、すいません、あまり過激なことを大声を言わないでもらって良いですか?他のお客様の迷惑になりますから。」


ゴブリンが女性を襲うなんて、あまりに時代錯誤でございます。

500年ほど前、魔王が勇者に倒された際、ゴブリン達も改心し、今までの悪逆を人間たちに侘び、何十年も掛けて和解がなされたのでございます。

それ以来、ゴブリンと人間は共生しながら仲良く生きてきたのに、今更我々の黒歴史をほじくり返す人が現れるとは思ってもみませんでした。


「せっかくゴブリンのホテルがあるって聞いて、ビキニアーマーまで買って、ワクワクしながらやって来たのに、ホテルに入っても罠の一つもありゃしないなんて、あんた達おかしいわよ!!私のこと犯したくないの!?」


「はい、犯したくありません。」


私は間をおかず、即答で答えました。


「く、狂ってる!!あんたらサイコパスね!!・・・そ、そうか、ビキニアーマーじゃ刺激が足りないんでしょ?それを早く言いなさいよ、待ってて、今、紐みたいなハイレグアーマーを・・・。」


突然その場で着替え始めようとした女戦士さん。私はすぐに従業員達を招集し、女戦士の蛮行を止めにかかりました。従業員達は女戦士さんを羽交い締めにして、着替えるのを見事防ぎます。


「は、離せぇ!!・・・くっころ♪」


抵抗する割に嬉しそうな顔をする女戦士さん。これには流石に恐怖から鳥肌が立ちました。こんなお客様は初めてです。

女戦士さんの着替えを阻止すると、従業員達は自分の持ち場に帰って行き、女戦士さんは顔を一変させて困惑の表情。


「あ、あれ?今から凌辱パーティが始まるんじゃないの!?」


「始まりません。」


私は即答しました。

すると女戦士さんはロビーの床に大の字で寝転がり。


「そんなイヤァーーーーー!!」


と絶叫する女戦士さん。もう流石に私も我慢の限界です。


「すいません、流石にもう目に余ります。もうホテルから出て行ってくれませんか?」


「ふん、言われなくても出て行ってやるわよ。レビューで低評価付けてやる。」


起き上がりながら口を尖らせる女戦士さん。低評価でも何でも付けて結構。とにかくゴブリンズ・ホテルの品位をこれ以上落とす前に出て行ってもらわないといけません。


「別にここだけが目的じゃないもん。この森を抜けた所に【オークの牧場】があるんでしょ?・・・オークの牧場・・・グヘヘヘ♪首輪や家畜プレイも悪くないわよね♪」


ゲスな顔を浮かべる女戦士さん。考えていることは何となく分かりますが、オーク達の名誉のためにここで一つ説明を。


「【オーク牧場】は牛の乳搾り体験、極上の肉料理や乳製品が食べれられる、安心安全の施設ですからね。アナタが思っているような、いかがわしい所ではありません。」


女戦士さんは、私のこの説明にショックを隠しきれないらしく、ヨロヨロとよろけながら絶叫。


「私の乳を搾れやーーーー!!揉みしだけやーーーー!!」


もう聞くに耐えなかったので、私が右手の指をパチンと鳴らすと、屈強なガードマン達が力づくで女戦士さんをホテルの外に叩き出しました。

当ゴブリンズ・ホテルでは、健全で一般常識を持っている方をお待ちしております♪













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【ゴブリンズ・ホテル】 タヌキング @kibamusi

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