毎日死ぬことを考えてる
極上檸檬
再開
生まれ変わったら何になりたいですか?
昔はよく考えてた。アイドルになりたい、スポーツ選手になりたい、ものすごく勉強して宇宙飛行士もありかな、なんて。
本当に生まれ変わった時の想像なんかして、馬鹿みたい。ありえない。現在わたしの心、腐りに腐って捻くれもいいところ。無職、独身、34歳。
朝から何か険しい顔をしたアナウンサーがひっきりなしに騒いでいて耳障りだ。
発砲事件立てこもりだって。物騒な世の中になったもんだ。
人間所詮、他人事だと気づいたのは30歳入ってからのこと。随分遅いだろう。知ってる。それまでのわたしは、悲しいニュースの時は一緒に泣くし、駅の改札口で、お金に困ってるおばあちゃんが声をかけてきた時も貸した、3回目なんだけど。このお金で美味しい牛丼でも食べて、銭湯にでも行って楽しんでくれ、ばあちゃん。その駅に行くのはその日以降やめた。それも心苦しかったくらい。今はそのお金を返してほしいくらい。疲れた。
うつ病ですね。そう言われ、病院を追い出されとりあえず出された大量の薬を毎日欠かさず飲んで、引きこもりになった30歳。
まだまだ働き盛りで結婚なんてしたら地獄じゃん、男に負けない超エリートになるんだからと思ってた20代。
久々facebook開いたら#家族揃ってBBQ#酒#人生楽しすぎ
みたいな。心臓がザワザワした。
冷蔵庫を開けると焼肉のタレと一味しかなかったから、食パンにつけて食べた。目を瞑って食べたら完全焼肉。優勝。その日39度の熱、吐き気に襲われて病院に行ったら脱水症状と言われ点滴をぶち刺された。初診だったから結構取られた。はらたつ。
「みきちゃん」
誰かに呼ばれたけど、よし、気づかないフリだ。てかメガネだしボサボサスウェットだし、声かけてくんな。
再び大きな声で名前を呼ばれ腕を掴まれた。終わり。なんでしょうかと顔を引き攣らせて、あからさまな態度で振り向くと#BBQ酒楽しすぎ女とその子供だった。
「超久しぶりじゃない?みきちゃん、全然facebook上げないから、気になってたよ〜」
出た出た、わたしはそれをSNS取り憑かれオバケと呼んでいる。略してSNSオバケ。
「ああ、、」
「今度、高校3年の時の同窓会あるんだけどおいでよ〜!DMで詳細送っとく!」
じゃあね〜と子供もわたしに手を振っている。あぁの一言しか喋ってないのだけど、大丈夫だったのだろうか。家に帰ると早速SNSオバケからDMが届いていた。
「堅野高校3年3組同窓会」10月20日日曜日17時 参加費男性2000円、女性無料(鈴木先生が払ってくれます!!)もちろん子供との参加もオッケーです!みんなひさびさ集まりましょう。連絡は、幹事、中村知恵080〜永原幸太郎090〜 まで。
無料なんて鈴木頑張るじゃん。そういえばいい先生だった。このバカなわたしが短大に行けたのはこの先生のお陰でもある。でもわたしは、3ヶ月で退学をするのだけれど。
飲んで食べて帰ろう。無料だから行くだけ。別に、懐かしむ訳でもないし、昔大人しくて芋みたいだったのに、凄く綺麗になっててその輪の中心人物みたいな位置に成り上がりチヤホヤされるみたいなのもうざい。必ず1人はいるやつ。SNSオバケはそれをアップするのを今か今かと待ち構えているのだ。
14時30分早く着いてしまった。楽しみにしてると思われるのは甚だしい。少し歩いてファーストフード店で時間でも潰すか。何も頼まないのは良くないのはわたしでもわかる。クーポンで一番安いのでも頼んでやろう。
日曜日ともあって結構混雑している。たまたま空いていた席がキッズスペースの窓ガラス越しだった。何にもないスマホをあたかも、誰かから連絡が来たと思わせるそぶりで触る。見るのはもっぱら薬局のクーポンか、通帳の残高口座。日に日に減っていくお金に、今日はタダ飯だから久しぶりに嬉しいが、早く帰りたい。15時15分、死にそう。
携帯越しにキッズスペースで遊ぶ子供がこちらを見てバンバン叩いている。うるさすぎる。こうゆう時親の顔を見てみたいと思うわたしは、捻くれているだろうか。
みきちゃーん!と籠った声が聞こえて、そいつがSNSオバケの子供だということに気づいた時には、時すでに遅し。
こちらにバタバタ走ってきて、わたしの席に許可も得ず座ってきた。
「子供が早く出たいってうるさくって、ここで遊ばせるのが一番いいんよ〜滑り台付いてるし、あ、かおりもいるよ」
あれと指を刺した先には、めちゃくちゃ綺麗になっている同級生がいた。
「え、あれかおり?」
「そうだよーてか、みきちゃん楽しみすぎて時間潰してる系?!可愛い〜あとでゆっくり話そうね〜」
と戻っていくオバケ。つかれた。へぇーあのかおりが、メガネかけてていかにも勉強一筋、恋愛断固拒否みたいな子が、結婚して子供もいるんだ。しかも2人。
わたしは、飲みかけのシェイクを一気に飲み干しまだ1時間半もあるというのに店を出た。
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