第11話 薄いドア


「おはよう」

「うん、おはよ」


「なにかあったの?」

「なんか、昨日……」


「昨日⁉」


「うん、昨日。」

「昨日休みだったじゃん!」


「なんなら今日も休みだよ⁉」

「ディズニー行ったじゃん!!」

「え?」


「行ったでしょ?ディズニー!!」


「あ、うん、そうだったね」

「もう、どうしたのかと思った」


昨日、あんなに怖いことがあったはずなのに、覚えていない。


目から溢れてくる涙が、止まらなかったはずなのに。

どうしてだろうか。


思い出すことが、できない。



私はなにを見ているのだろうか。 


歩道先に、薄くドアがあることに気が付いた。


変に懐かしい。

「なにこれ……」


「前こんなのなかったのに」

「どうしたの?」

「ほら、ここに薄いドアが……」


「え?どこどこ?」

「見えないの?」


「うん」

「ドア、開けるよ?」


「うん、開けてみて!」

ガチャ

「待って!!」


そこには、広い湖が広がっていた。


しかし、いつまで経っても階段は出てこない。

あの、懐かしい硝子の階段が、もう出てこない。


「こんにちは」

「え?誰?」


「貴方が今求めている人と、」

「貴方はどのくらい共通しているのか、想像しなさい。」


「制限時間30秒」

そんな機械の声も聞こえてくる。

「不正解なら、湖に消えます。」

「残り25秒」


ずっと放置していた。

この空間にくると、わかってた気がした。


あっているのだろうか。

もしまちがっていたら……


「残り10秒」

周りが赤く点滅し始める。


でも、……やるしかない。絶対に。

「残り、8、7……」


機械の声が恐怖を煽る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る