第9話 無理しないで

今、私には、星しか居ない。

辛くても、やっぱり生きるべきだったのか。


「無理しなくていいんだよ?」

「私も無理してないし」


星が無理しているのは、分かっている。


お母さんだって、絶対に殺したくて、

殺したわけじゃない。


「おい、お前。」

「……。」


「聞こえてんのか?」

「聞こえてんのかって言ってんだよ!!」

「っ、……」


「お前、絶対あのときの奴だろ」

「……綺羅、桜先生を、!」

「は?それでも死にたいと思ったつもり?」


「え、」

「私、人殺しなのは分かってる。」


「だけど、今君は現実に居ないんでしょ?」

「はっ、?」


「知ってるよ。」

「私も、だいぶ前に死んでる。」


「何言ってんの?」


「この世界には"転生"が存在するから。」

「私は元々の私を殺したくて転生してきたんだよ。」


「待って!」

「……なに」

「話をさせてよ」


「ねえ、あなたはいつ死んだの?」

「24年前。」


「思ったよりも前……」

「24歳の相手を殺しに行ったからね。」


「私は、転生してここにいるの。」


「死んだら時が速くなるでしょ?」

「だから、24年前に遡って、」

「ここに来た。」


「ちなみに、30年前に起きた連続人身事故のこと、知ってると思うけど、」

「あれはあなたが30年前くらいに生きてたってことになるからね」


「30年前……」

「そう。最近星たちに話しかけてくる、君みたいな知らない人、増えてるの。」


「あのときの子なんでしょ?」

「私は覚えてる。」


「ちょっとだけ話したよね」


「私が桜先生に誹謗中傷が酷いって話。」

「うん」


「なんで誹謗中傷してたのかっていうと、」

「私と桜先生はね、」

「……同一人物、だからなんだ。」


「え、……っ」

「普通に考えたら、おかしいでしょ?」


「だから、1人になるために、」


「桜先生を、自殺させたんだ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る