第6話 ごめんなさいって言わせて
どうして、いつから、なんで、
「ごめんなさい」の一言ぐらい、言わせてよ。
私、悪かったの?
星のためにって毎日考えてたんだよ?
この前だってそうだった。
入学前。
本当に小さいときのことだった。
星とは幼馴染で、
いつも一緒に居た。
いつも。
いつも。
だけど、あの日。
4月9日。
だいぶ前の、あの4月9日。
私のお母さんが死んだ。
星が殺した。
だけど、親が悪いとも言える。
星の親は、私の親でもある。
星が殺したのは、私のお母さん。
それ以外なかった。
なのに、星はずっと、
「やってない」
「やるわけないもん!」
ずっと、不審者が入ってきたと、
そう言っていた。
「星の、星の嘘つき!!!!」
それしか、言えなかった。
お母さんが死んだら、もう会えないんだよ?
ずっと、憎んでいた。
星と、話が噛み合わないのも、
それが理由だ。
だから、途切れ途切れの会話になっていた。
だから、会話が続かないわけだ。
それからずっと私は、星の家に住ませてもらっていた。
だから、だからなのか、
私は本当にとても、使われている。
「ねぇ、ご飯は?」
「すみません」
「本当に頭が悪い子ね」
「やめてお母さん」
「お母さんなんて呼ばないでくれない?お前の母じゃないから」
「何回言ったらわかるわけ?」
「黙れ。喋るな」
「あ、おはよう星!」
「おはようじゃなくて、お母さん、」
「今日の朝ご飯はパンケーキよ!」
「ほら、早く着替えてご飯食べなさ~い!」
「……。」
「ほら、今日は学校でしょう?」
「星?」
「準備しなさい」
「おい、お前は自分の部屋に戻れ。」
「はい……。」
コンコン
「失礼します。」
「どうしたの?」
ニコッと笑う私だけど、多分笑えてない。
ただ星を心配させるだけだった。
「ごめん……」
「大丈夫。」
「パンケーキ、食べる?」
「ありがとう。でも、大丈夫。」
「え?3日も食べてない…」
「だから、大丈夫。」
「ねぇ、食べなよ!」
「大丈夫。」
「星~準備しましょ~!」
お母さんが少し遠くから話しかけてくる。
きっとキッチンからだろう。
「ほら、行きなよ」
「う、うん」
「ねえ、」
「なに?星。」
「想いを詰め込みすぎたときは、この鍵を使ってね」
「これ、あげるから」
「え、?」
「いってきます」
ガチャン
「今…だな」
上手く死ねるかは分からない。
今まで我慢してきたぶんだけ、幸せになろう。
「来世は幸せに生きられますように。」
「来世も星と一緒に生きられますように。」
目の前が真っ暗になって、
やっと終わったんだ、と安心した。
痛みだって感じなかった。
私の来世はどうなんだろう。
本当に、幸せなのかな。
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