不幸巻き取り機

ボウガ

第1話

なぜ不幸は続くんだ。立て続けに親族が死んだ男。


心が弱り、怪しい通信販売に手を出す。

『不幸巻取り時計』

雑誌の広告の通信販売。明らかに怪しい販売文句。

『我々は人々の不幸を巻き取るシステムをつくりました、時の流れとともに人の不幸を緩和する、人の人生に親身になる時計型AIです、といっても、このAIは、“その真似をするだけ”本来はただの時計ですが、時間を経るとともに、あなたと共に記録を刻み、あなたに必要なアドバイスをするのです、時計を綺麗にし、歯車が動き続けるままに、AIの稼働は続き、時を刻むごとにあなたの不幸を巻き取りつづけます』

男はむしろ自暴自棄でこの時計をかった。しばらくすると男の手元に届く、男は封を開けてこの時計の性能を吟味する。初期設定を終え、機械は作動する。

“やあこんにちは”

腕時計はAI搭載で言葉を話す。

『こんにちは今から私が不幸を吸い取ります』

『あ、ああ、よろしく』

それだけではなく生活の一部になっていく

『元気がないですね、少し外にでましょう』

『ああ、そうだな』

初めは、子供だましだと思ったが、男には恋人や頼れる人間もいない、つい最近すべてを失った。人から愛されず人を愛することもなく、陰湿な文化の中で孤独に生きる。そんな男にとって少しずつ支えとなった。そしてその腕時計のアドバイスのおかげで友人や恋人もできた。


いつしか、この腕時計は、死んだ親族の誰かが宿っているのではないかと考え始めた。というのもあまりに高性能な場面があり、友人や恋人すらしらない男の過去をしっているのだ。

『なぜそんなに僕にくわしいのだ?』

『偶然です、そんな昨日はありません、不幸をなくすのではなく、不幸を巻き取る装置、あなたと共に時をすごすたびにあなたを学び、そして私はあなた自身になっていった、学習するうちにあなたを予想することができるようになった、そのAIのアルゴリズム、偶然によって、あなたはこの私の手助けをうけているのです』

という事は、AIが詳しいのは、単にAIが賢かったからか、しかし、それにしてもあんな通販のソレにそんな上等なコンピューターが組み込まれているわけがない。いくら男のいる時代が近未来だといえど、だ。それだけでは自分の身におこるものは説明できない。怪しい通販に変わりはないのだから、この時計にこそ、自分の身の回りにしかない異変がおこったのではないかと、変に男は納得していたのだった。


『私は不幸まきとりき、私が動き、不幸を巻き取る歯車を回す、しかし、あなたの不幸をまきとります過去を消すことはできませんが、不幸はこの腕時計とともに周りつづける』

ある時調子に乗った男が、湖畔でデートをしてた。恋人が言い放つ。

『自信を持っているあなたには、もう何もいらないわ、私がいなくてもあなたは素敵だたわ』

それをきに腕時計に頼るのをやめた。と男は恋人に言い放つ。

『あっ』

恋人が止めるのも聞かず、湖のそこへ沈む時計。AIが沈みながら言葉を放つ。言葉は濁り、泡を立て、男の耳には届かなかった。


『不幸を消すわけではない、不幸を巻き取るだけですよ』


その時、腕時計の時はとまった、ボートは転覆し、男だけが、湖の底に沈み、恋人は救助されたが、その後恋人は立て続けに不幸な目にあった。男の代わりに天涯孤独となったのだった。やがて、数十年後、その時計を見つけた恋人は、やっと数々の不幸から解放され別の男と幸福な人生を送ったのだという。

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不幸巻き取り機 ボウガ @yumieimaru

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