キミヲ創造スル。

明鏡止水

第1話

「目覚めましたか?お父さん!」


どこかで聞いた声がする。

自分は「お父さん」なんかじゃない。ビル群でさしてお気に入りでもないのに、身だしなみとして着ていた高級スーツ。

よく磨かれた靴。オールバックのワックスの効いた髪。好きなものはパン。嫌いなものはセンスのいいネクタイの選び方。


そんな人生だった。一流のビジネスマンだった。独身。子供はなし。

ところが、予約しておいたタクシー運転手が、俺に恨みを持っていて、鳩尾に思い切り、タクシーの車体をぶつけてきた。

ひどい衝撃に、

呼吸


痛み、


そして。


世界は黒いトンネルを抜けて女子高生の光の終点へ


「お父さん!今日こそ思い出した?」

手を後ろでに組んでワクワクとした、少女。独身だった俺の。今は。

転生した俺の娘!しかもアイドル兼モデル!


声に聞き覚えがあったのは、今世で俺は!

「アットホームダッドだからだ」


はああっ!!


と、娘・天華(てんか)が雲の晴れた美しい、カメラがあったらすかさず撮らなければならない表情をする。


「お父さん、記憶、戻ったんだね!」


手を後ろに組んだまま、リビングでダンスする。

ダイニングキッチンで、転生した俺は、気を取り直し、ミートソースを作る。スパゲッティにしよう。


「あーん!お父さん!記憶が戻ったと同時にスパゲッティ作ってくれるの?それもひき肉たっぷりミートソース!だいすきいぃ」


俺は言う。


「どうして」


「どうして俺は、国民的アイドル・モデル、宮下天華の、父親に転生しているんだ!」


玉ねぎを切りながら全ての答えは。


「だってそれは、親に生まれ変わって欲しかったんだもん♪」

片手は背中に、人差し指は口元に添えて。


「内緒だよ、逆転・親代わり転生!」

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