第3話

「しけた面してんな」


 訳の分からない初対面の男にそう言われて、俺はただ涙を流した状態の顔のまま呆然とその男の姿を見る。


 相変わらず状況が読み込めないのだが、数分に及ぶ短いような長いような静寂な時間が俺の頭を冷静にしてくれた。


 

 その男をよく観察してみると脚のすらりとした颯爽たる長身に口調とは反して優しい顔つきである。

 年齢は俺と然程、変わらないだろうか?肌付きが綺麗であった。

間違いなく一度出会っていたら忘れないぐらいの印象だった。


 だが、記憶にない以上この男とは初対面なはずだ。


 


 

 

 'どういう事だ?'

 '何か知っているのか?'


 

 その男は笑みを浮かべている。側から見れば絵になるような笑みだが、何を考えているのか分からない俺からみれば不気味でしかなかった。

 いくら考えたところで結論が出ない為、直接聞いてみる事にした。


 「あのーどこかで会いましたか?」


 「ふっそんな事よりも復活した気分はどうだ?」


 「復活?どういう事ですか?」


「いいから、答えろよ」


ぶっきらぼうにその男は言い放つ。




 

 '上から目線で偉そうなこいつ一体なんなんだ、何を知っている?'





 と心で舌打ちをする。


「どういう事になってるのか私にはさっぱりです。何か私の身に何が起きたのか知っているのなら教えていただけないですか?」


 その男は笑みから真顔になり、興味の失ったたような声色になっていく。


「はぁーなんだこの程度の奴なのか...普通の奴と変わらねぇじゃん.............つまねぇの」


 また、その上からの物言いについつい頭に来てしまう。

 身の覚えのない事に対して馬鹿にされている気分はどうしてもよくない。

 だが、今までの俺なら面倒な事に対しては関わらないようにはしているが、何をこの男に駆り立てているのだろうか?

しかも、怒りを感じるのも俺らしくない。


 'いいから、何者な.....ん...........だ'


 掠れた声になってしまう。

 元々ある本能なのかこの男に対して反抗意識はあるが、何故かストレートに口に出す事が出来ない。

 手と足と体全体が小刻みに震えてきた。


'もしかしてこの男にビビっているのか?'


 俺が思っている以上にとんでもない奴なのだろうか?


 

 その男は暫くして溜め息を吐いた後


 「まあ、いいか...少しは楽しませてくれよ」


と、その男は姿を消した。



 何一つ有力な情報が得る事が出来なかったが、ただ、あの男はただ者ではないとひしひしと伝わってきた。


 

 暫くして

 「はぁー疲れたぁー」


 と、俺は再び思案に暮れるのだった。


 



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