坂木秀明の習作
神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)
第1話
困ったことになった。
どういう訳か、三木本高校では全生徒に部活加入の義務があるのだ。適当に出した入部届。二年に進級して、顧問が変わったらしい。教師は言った。部活に顔を出さないのは構わない。ただし、毎月、作品を提出するのならば。嫌なら、退部すれば良いとの話だった。私は、渋々、了承したのだった。毎月、コピーして作った冊子に作品を載せるとのことだったので、私はひとつお願いをした。
「筆名は、SSで」
と言うのも、私の名前は「坂木秀明」と書いて、「さかき・しゅうめい」と読むからである。大抵の場合、「ひであき」と思い込んでいる。私も、いちいち訂正しない。まあ、それは良い。
問題は、作品である。本ならば、呪いが成り立つほどにある。だからと言って、ほとんど創作したことがない。私は、恋人と友人に助けを求めた。
「なんと! 伝統ある三木本高校文芸部の部誌に、坂木の駄作が載るだなんて! とんだお笑い草ね!」
「駄作決定かよ…」
今日も今日とて、天才美少女画家たる
「あ、僕、ファンタジーが読みたいな」
美少女より美少女らしい、
「ちょっと待って。ファンタジーとな?」
ファンタジー? ファンタジーって何だ。そんなもの、うちにあったか?
「『遠野物語』?」
「ええ、うーん?」
「ちょっと、違わない?」
大いに悩む、三人。ふいに、呉碧が立ち上がる。
「ファンタジーとは、世界の秘密を暴くものなのよ!」
「あ、ああー…。で?」
「それを考えるのが、お前の仕事だよ!」
でしょうね。うん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます