第六章 ③
「私は君が好きだ」
桐秋は気付けばそう
美しいものを見たときに、心が満ちて、はらりと涙が落ちるように。
桐秋はただただ、千鶴が秋の桜を
胸に満ち満ちていた千鶴への
そうしてあふれた想いは、うちにとどめておくことが出来ず、愛を告げる言葉として
桐秋の想いを
桐秋の突然の告白に千鶴は、大きな
桐秋は千鶴の目を丸くした顔に、本能に流されていた自分から我に返るも、うちから
丁寧に、丁寧に、言葉を紡ぐ。
「君に想う人がいることは知っている。
それでも、今、君が、秋の桜を
それが今、心のまま、口から漏れ出てしまった。
これは私のエゴだ。自分勝手なわがままだ。
君を困らせているのもわかっている。
私は、近いうち、この世からいなくなる。
それまででいい。
君を、想うことを、許して、、、くれないだろうか。
君に想いまで返して欲しいとは望まない。
ただ、それでも、私の想いを君に知っていて欲しいと思ったんだ。
君の嫌がることはしな・・・」
「いなくなるとおっしゃらないでください」
桐秋の声を
瞳に涙をいっぱいに
それは男の弱い顔。
女の強い顔。
手を白くなるほどに
「冗談でも、この世からいなくなるなんておっしゃらないでください。
桐秋様がいなくなっていいのは、おじいさまになってから、人生の盛りを
桐秋様には、まだまだそれが足りません」
頬に
「ならば、余計に君を想うことを許してくれないだろうか。
君のことを想えたら、私はまだ、生きようと思えるから」
ずるい言い方だ、と桐秋は思う。
こんなことを言えば千鶴が
自分が死ぬ、と言うことにさえ
そんな桐秋に返ってきたのは、
「私などで、いいのですか」
想像を超えた答え。
いや、そうあればいいとは思っていた。が、そうであってはいけないとも思った答え。
「私は、人を愛するということが、よく、分かりません。
そのような私が、桐秋様に想っていただいてもよろしいのですか」
「ああ」
「私は、はじめ、桐秋様のお心を察せず、傷つけました。
この先もそうして、桐秋様のことを傷つけることがあるやもしれません。
それでも、よろしいのですか」
「ああ」
「私自身、
それでも、いいのですか」
「ああ」
桐秋が、望む以上の言葉。
愛することが分からないと言いながらも、千鶴の
止めどない涙の流れを作りながら、千鶴は桐秋にいくつもの許しを求める。
——千鶴の、言葉を紡ぐ
桐秋はゆっくりと千鶴の顔を下から
「もう、君が心配することはないか」
首を傾けて告げられる桐秋の言葉に、千鶴は少し迷うように
しかし、すぐに首を縦にふって、桐秋を見つめた。
迷子になった子どものような目ですがる乙女に、桐秋は柔らかに問う。
「君は、私が嫌いか」
千鶴は、首が取れそうな
その顔は涙にまみれていて、少し
千鶴は手を胸に押しつけながら桐秋に告げる。
「好きです。
私も桐秋様のことが好きです。
この身から出る感情をなんと言い表していいのかわかりません。
気が
それらを
それでも、桐秋様を“好き”という想いは
桐秋様がこの世界からいなくなってしまうことがとても恐ろしいのです。
他の誰にも感じたことのないほど大きい、失う恐怖。
これを愛というなら、私は桐秋様を・・・」
『『愛している』』
そこからの言葉は
その行為に、千鶴はますます
こらえようとするが、この世で
千鶴の感情の
千鶴も
思いも掛けない告白に千鶴は
それでも、桐秋の想いを受け入れ、さらには自身の想いを精一杯、桐秋に告げてくれた。
落ち着かせるように、なだらかな
——想いが重なったとはいえ、現実はつらいものだ。
桐秋の病気は
けれども、今は想いが重なったことを喜ぶ。
恋の深みを
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