究極回避火事場双剣でダンジョン無双~覚醒したスキル回避と火事場力が強すぎて表ダンジョンの攻略班から外された俺は土下座されて裏ダンジョンを攻略することになりました。あ、対価は配信の許可でお願いします~

ある中管理職@会心威力【書籍化感謝】

第1話 覚醒

「前衛はまず脚を狙え! 後衛はボスの機動力が削げるまで前衛に回復をっ! 防御壁の維持も忘れるな!」

「はぁはぁはぁはぁ……。ボス戦ってこんなにしんどいのかよ。参加……するんじゃなかった」


 ダンジョン5階層。

 魔力が動力源となりつつある世界で、俺は世界のため人類のためという大義名分を背負ってダンジョン最前線で戦う攻略班に参加していた。


 今回はボスが強力だから参加するだけでたんまり報酬金が貰えるって話だったから来たものの……。


 俺みたいなレベルだけそこそこの雑魚狩り専門にこんなの相手しろとか無茶苦茶だって。


『ジェノサイドコボルトキング:レベル35:ランクC』


 ダンジョンのシステムによってその頭上に映し出されたボス情報。

 普通のコボルトの数倍はあるデカい身体と、武器を振っただけで走る衝撃波。


 俺のスキル、『回避力向上』でなんとかこれは対応できるけど、どうしても回避後の隙が大きいというデメリットのせいで、続けて繰り出される通常攻撃がどうしようもない。


 背中から生える複数の腕。

 それは俺たち全ての前衛を殴打、しかもその威力はガードごと俺の身体を吹っ飛ばすほど。


 見た目的がカッコいいとかスキルと相性が良さそうとか、なんとなく5年使ってた双剣が悲鳴をあげる。


 こんなことなら盾と相性のいい片手剣にしておけば――


「ごがあああああああああああああああああああ!!」

「くっ!」


 雄叫びと共に放たれる衝撃波。

 そして力強い拳が俺の身体全部を震えさせ、壁まで運んでくれる。


 HPの消耗が激しい。

 けどダメージを負った探索者が多過ぎて回復が間に合っていない。

 このままじゃ、死ぬ。



「――『サバイブファイア』」



 そんな状況で後衛の魔法職が俺たちに掛けてきたのは回復ではなく、火事場の馬鹿力バフ。


 俺みたいなのにまでなんで声を掛けてきたのか不思議に思っていたけど……なるほど。


 最初から俺たちは捨て駒。


 使えないと分かればこうして一か八かの魔法で強化して特攻させる、と。


 防御壁の維持……それは俺たちが後退、じゃなくて逃げださないようにするためでもあったってわけだ。


「ま、完全に見捨てられるよりかは遥かにマシだけど。はは……。折角バフを掛けて貰ったんだ。だから、俺まだ死にたくないからさ。最後まで足掻かせてもらうぜ!」

「ごがああああああ!!」

「それは……当たらないっ!!」


 四苦八苦した挙げ句絶望の表情を浮かばせ動きが鈍くなり始める前衛の探索者たち。


 だが俺はそれとは反対に、ボスとの距離を詰める。


 衝撃波を回避、案の定飛んでくる拳。

 そしてそれに対して俺はダメ元で攻撃を繰り出す。


「ぐあっ! ま、まだまだ……」


 回避、反撃、回避、反撃、回避、反撃、回避、反撃……。


 味方の魔法攻撃も飛んでは来るものの、何度同じ事を繰り返してもボスのHPは僅かにしか削れない。


 バフの効果って思ったよりギリギリなんだな。

 もう回避する気力も体力も……これじゃあバフを活かす前に殺され――


『HPが一定を下回りました。魔法によるバフ効果により攻撃力が通常時の1000倍となります。さらに攻撃を受けた回数が一定に達したことで覚醒の条件を満たしました。スキル回避力向上が【究極回避】へと変化。HPをMAX10に固定。差し引き240の値が攻撃力へと変換。以降も上昇するはずだったHP分、攻撃力の値が上昇します。HPをMAX10に固定完了。常時バフ効果発動状態を確認。掛けられた魔法によるバフがパッシブスキルに変化。パッシブスキル【火事場の馬鹿力】を取得しました』


 頭に響いたアナウンス。勝手に動く身体。

 広範囲に走る衝撃波を俺はヒラリと交わし、ボスの拳さえも簡単に避ける。


 しかも避ける度その距離を詰めていて……俺は絶好の間合いで剣を構えた。

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