ダンジョン・クローラー ダンジョンで死体を撮る男
上本利猿
プロローグ【この世界について】
今から大体20年前、日本各地にダンジョンが現れた。
もちろん律儀に何もない所や地中に出現するわけもなく、
元々あった建物や河川や海、果ては空中に現れ、社会は未曾有の大混乱に陥る。
病院も役所も警察もスーパーも家もぶっ壊され、
たまに人が出現に巻き込まれては融合して、頻発区域は人間が夢想する地獄より悲惨な状況と化した。
海や川のダンジョンは水道を止め人々を脱水症状に追い込み、空中のダンジョンは支えるものがないためそのまま落下。街ごと押し潰されたケースもあった。
しかし人類もただでは起きない。ダンジョン災害を乗り越え復興を重ね、ダンジョンそのものの研究も活発化していった。
特にダンジョンの発生数がトップだった日本も例外ではなく、ある日本の研究チームによって、ダンジョンの新事実が次々と明らかになっていった。
一つ、ダンジョン内部には強力なモンスターと呼ばれる未確認生物が存在する。
二つ、ダンジョン内部に入った人間は、”スキル”と呼ばれる超自然的能力、およびそれを発動させる”臓器”を手に入れることができる。
三つ、モンスターの死骸やダンジョン内部には未知の鉱石や資源が存在する。
資源の中には物理法則を超えた超常的効果を齎すものがある。
この事実をいち早く知った日本政府は他国に圧倒的な差を付け世界有数のダンジョン資源国となる。
さらに資源の莫大なリターンを知りこぞって装備を揃え探検家として活動して利益を稼ぐ者も現れ、さながらゴールドラッシュの様相を見せた。
そして時は流れ現代。モンスターの討伐や、ダンジョンの完全制覇の配信が爆発的に流行。マナーやモラルのない若年層の悪徳探検者が目立ち始める中、
一人ブッチギリで嫌われ続ける男がいた。
男の名は三島宏樹。
ダンジョンで発生した悲惨な事件・事故の写真を撮りアップし続ける、
探検者でもなんでもない、ホームページの一管理人である。
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