第108話 隠れ婚約者候補

―――その後パーティーが始まり…

続々とゲストのみなさんが会場へやってきた。


今日は、家族も侍従も護衛騎士たちも、

いつも以上に気合いが入っている。


そのせいか、

この屋敷に足を踏み入れた途端

ゲストのみなさんが「キャッ眩しい!」だの

「ここは天国ですの?」だの足元をふらつかせていた。


だいたいお迎え作業がおわったので

わたしは庭の方へまわり、

隠れ婚約者候補と思われるご令嬢たちや

お兄様のご友人たちにご挨拶をしていたのだが……


『おやおや!?』

向こうから新たにやってきたご令嬢の中に

ものすごく見知った顔がいるではないか!


「ミ、ミラ様!?」


そう、わたしの大切なおともだちであり、

お茶会仲間。そして学園の1学年上の先輩でもあるミラ・テッド辺境伯令嬢がいたのだ!


「ニコル様!お招きいただきありがとうございます!兄君であるキース様のお誕生日パーティーにもお呼びいただけるとは、光栄ですわ!」


『え、え、聞いてないよ!

わたしが招待したことになっているみたい。』


とりあえず知らないとは言えないので

来てくれたお礼を伝えて、ミラ様をガゼボに案内する。


―――これはまさか…お母様の企みか?


遠くに見えるお母様をチラ見してみると

「ほほほ」と美しくこちらにウインクしてきたではないか。


なるほどなるほど、たしかに!

さすがはお母様である。

お年頃も近く、美人で賢く優しいミラ様に目をつけていらっしゃったのか。

そしてわたしとも大の仲良し!


「…ニコル様?どうなさいましたの?」


ミラ様は少々様子がおかしいわたしが心配になったのか、キョトンとされている。


「いえいえいえ、おほほほ…!

何でもございませんわ!お料理を作りすぎてしまって!ミラ様もぜひお召し上がりくださいね。」


それにしてもミラ様は、まさか自身が隠れ婚約者候補になっているのを知らないのか

「今日は、カレン様とライラ様とアンナ様はいらっしゃないのですね?」

とキョロキョロされている。


うむ。

ミラ様には申し訳ないが、今日のわたしの作戦は決まった。


その名も……

『お兄様とミラ様の仲人大作戦!』だ。

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