第99話 ミステリアスボーイの魔法指導 1

―――そしてその時はすぐにやってきた。


「オリバー、こちらがニコル嬢だ。よろしく頼む。」


「お初にお目にかかります…ワトソン伯爵家の長女ニコルと申します。この度は貴重なお時間をいただいてしまい申し訳ございません。ご指導の件、お受け頂きありがとうございます。」


「うん…大丈夫。こちらこそ…よろしく。」


いま目の前にいるのは、

わたしの魔法指導をしてくれる事になった

ひとつ上のオリバー様だ。


殿下は思い立ったら行動が早い。

ものすごく早い。


どう言えば、公爵家の次男であり次期魔道士協会長候補のエリート様が、

こんな落ちこぼれ魔力の伯爵令嬢にマンツーマンで指導してくれる事になるのか不思議だが、さすがである。


『それにしても…やっぱりオリバー様もとんでもない美丈夫だったー…』


殿下の髪色よりも少し濃いピンクゴールドの髪。

目のギリギリまで前髪で覆われているのにもかかわらず、天使のようなかわいらしいお顔であることは隠しきれていない。


『母性本能をくすぐるとはこのことか。年上とは思えない萌えオーラだ。』


ただし、無口なのか口下手なのかは分からないが、非常にミステリアスボーイであった。



一方、この謎めいた美少年とは反対に、

ミステリアスさの欠片も何も無い

ある意味ファンタスティックボーイな殿下が、オリバー様の方へ歩いていく。


見た目は眩しいよなぁ…ふたりとも。



「今日は、私も"たまたま"暇だからな。おまえの特訓を見守ってやる。オリバー、早速はじめてくれ。」


殿下はわざとらしくそう言うと、

サロンのソファーに腰をかけた。


帰らないんかい。ありがたいけど。

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