第82話 招待状
―――2月13日、バレンタインデー前日。
ワトソン伯爵勢のみんなは、
朝からドタバタと準備に追われていた。
…なぜかって?
あのあと本当に殿下から
招待状が届いてしまったからである。
それはもう屋敷中大騒ぎであったが…
もしもしみなさんや。
"招待状"と言えば聞こえはいいけど
実際の中身はこんな感じですよ…
「先日言ったとおりチョコ菓子の作り方を教えるように。日付は2月13日正午。到着したら従者が食堂まで案内する。参考用にチョコ菓子のサンプルをいくつか用意してほしい。」
―――わたしは業者かな?
『なぜ最初から厨房ではなく食堂?
というか王子様がお菓子作りを許されることなんかあるのか?サンプルとは?作れそうなお菓子ってこと?』
いろいろ訳が分からなかったが、
ひとまず手土産にもなるので色んな種類のチョコ菓子を昨夜のうちに仕込みまくり…
不足がないようにだけ気をつけた。
「お嬢様!道具はこれですべてでしょうか!?」
「お嬢様!サンプルのご確認をお願いいたします!」
「お嬢様!手土産の準備ができあがりました!」
「ニコル様!早くお着替えを!」
「ニコ~!本当に行くのか?」
「ニコ、失礼のないようにね!」
「ニコ、なるべく人目に触れないようにするんだよ?」
四方八方から話しかけられ、確認され、
支度を促され、心配され。
さすがにわたしもプチパニックである。
あ、あ、なんか限界社会人時代を思い出した。わー忘れたい…スローライフ…スローライフ…
前世の忙殺状態がフラッシュバックしたため、一旦わたしは思考をショートさせた。
『はぁ…昨日は楽しかったな…』
ーーーそう、昨日はよかった。
カレン様、ミラ様、アンナ様。
そしてお茶会初参加のライラ様と共に、
女子だけでチョコ菓子を作ったのだ。
今回は、調理器具も材料もそろっている我が屋敷にみんなをお招きし、
ご令嬢たちには初心者でも簡単に作れる
デコチョコと、生チョコを教えた。
簡単なこともあるかもしれないが、
みんなセンスがよく、初心者とは思えないほどかわいくきれいに仕上がっていた。
美少女たちが甘いお菓子を頬張り目を丸くし、きらきらとした笑顔でおいしがる様子はそれはそれは眩しかった。
(ちなみにライラ様は肌改善され薄化粧になり、かわいくなった)
他にも、あらかじめ用意しておいたタルトに生チョコを注ぐだけの簡単チョコタルトも作ったりして・・・
『みんなちゃんと渡したい人がいるみたいで、かわいく包装もしてウキウキしてたしな~』
ま、カレン様のお相手は
これから会うキラキラ第3王子なのだけど…
結局めぐりめぐって殿下との約束を思い出す羽目になり。
馬車に乗り込む頃にはゲッソリしてしまった。
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