第29話 お料理大作戦

部屋に戻り着替えを済ます。

今日は結局、トマトの冷製パスタのレシピを渡してきた。


『来週は誕生日かぁ…』


ふと、ここに来た時のことを思い返す。


日本に帰れないのは残念だけど、

幸いにもわたしには前世の記憶もニコルの記憶もあるので生活には困らない。


それに、借金地獄で働くか寝るしかなかった生活を考えると…


ここにはやさしさと愛情たっぷりなみんなもいるし、楽しく過ごさせてもらっている。

ご褒美なんじゃないかと思う時もある。


『誕生日って……そもそも産んでくれた両親や周りの人に感謝する日でもあるよね?』


それを思い出して

なにかみんなに日頃の感謝を伝える方法がないかを考える。


誕生日といえば……


「あ!そうだ!いいことを思いついた!」


ふふふふふ……


誕生日といえばケーキにご馳走。

おいしければ沼らせることに成功し

料理を日常的に作れる環境になるかもしれない。


誕生日という特別な日を盾にして、

"料理をつくりたい"という

ワガママを追加できいてもらおうじゃないか。


決して自分がしたいだけではない。

恩返しの手段として、"たまたま"ぴったりだっただけである。


こうしてわたしは、手紙やら小物という感謝の伝え方もあることはすっかり無視して、

お料理大作戦を実行するのであった。

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