第15話 許さない
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「ずぇえええええええっっっっったぁあいに許すもんですかぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――」
放課後、学校から一番近いカラオケに飛び込むと、千春は今日一日抑え込んでいたドス黒い感情を吐き出した。
表向き千春は学校一の清楚系で通している。
その本性が清楚系とはかけ離れた自分本位の腹黒だったとしても、いやむしろ自分本位の腹黒だからこそ、人前で本当の姿を晒すわけにはいかない。
(……直樹のせいで危うくボロが出かけたけど……)
中学高校と上手く立ち回って来たので、千春には味方が多い。
美少女の癖に幼馴染の冴えない男子と付き合っている真面目な子というのが周りの印象だろう。
その方が色々と得する事が多いのでそう見えるよう振る舞ってきたわけだが。
お陰で直樹が淫乱ビッチと昼飯を食べる約束をしたという情報も勝手に入ってきた。
二人の破局は学校では結構なトピックスになっていて、わざわざ調べなくても直樹の現状を教えてくれるお節介なアホがいくらでもいるのである。
ありがたいとは思わない。
普通に考えて、浮気された(事になっている)女に元カレの情報を逐一報告する奴なんか他人の不幸を楽しみたいだけのただのカスである。
世の中の人間の99%はカスだと思っているので気にしないが、有用ならば利用はする。
それで千春は昼休み、浮気されたのにまだ未練のある健気な女を装って直樹の様子を探りに行った。
いったいあいつはどういうつもりで学校一のヤリマンビッチなんかと付き合う事にしたのか。
三年ちょっとも付き合った仲なのだから、遠目から様子を伺うだけでもなんとなく分かる事はあるはずである。
ところが直樹は教室にいない。
ならビッチの教室かと思っていると、別のお節介カスが親切にも二人は食堂に行ったと教えてくれた。
その時はそれほど不思議には思わなかった。
直樹は弁当だから、ビッチの方が弁当無しなのだろう。
きっと片親で、その親もろくに愛情を傾けていないに違いない。
だから弁当がないし、誰とでも寝るような股の緩いビッチに育ったのである。
勝手に決めつけると千春は食堂に向かった。
(……直樹の癖に無駄な手間かけさせて!)
その時点で既に腹が立っていた。
食堂に着いて千春はすぐに直樹の真意に気づいた。
(あの野郎、ビッチとイチャイチャしてる所を見せつけてあたしを嫉妬させるつもりね!)
それだけじゃない。
ビッチと楽しそうに過ごす事で、千春よりもビッチの方がイイ女でイイ彼女なのだと周りに宣伝するつもりなのだろう。
その証拠にビッチはちゃんと弁当を持って来ていた。
普通に考えれば、わざわざ弁当があるのに汗臭い運動部が大勢いて混んでて煩い食堂なんかに行く理由がない。
つまりはそういう事である。
それだけでも許せないのに、直樹は本当に心から楽しそうにビッチと昼食を食べていた。あんな楽しそうな顔、彼女だった千春だってそんなに見た事がない。
ビッチだって満更でもない顔をしていた。
ビッチの癖に!
『ね~。今度手作りのおべんと持ってきてあげよっか?』
『え、いいよ。悪いし』
『い~のい~の。そ~いうの憧れてたし、あ~しがやりたいだけだから』
『……それなら俺も作って来る』
『変な遠慮しないでい~ってば』
『……遠慮してないわけじゃないけど。俺ばっかりして貰うのは嫌だし。その方が俺も気兼ねなく姫麗の弁当食えるから』
『あはは。アッシーチョ~真面目じゃん』
『真面目とかそんなんじゃねぇよ。てか、食えないもんとかあるのか?』
『玉ねぎの皮と卵の殻とアサリの砂利とか?』
『そもそも食いもんじゃないだろそれ』
『アッシーこそ食べれない物あんの?』
『……多分ないと思う』
『ちょ~不味くても?』
『……まぁ、よっぽどじゃなけりゃ。出された物は残さず食えってしつけられたし』
『あ、あ~しも! おコメ粒残すとお百姓さんが夜中に目を潰しに来るって!」
『はぁ? なんだよそれ。怖すぎだろ……』
『ちょ~怖いよね! だからあ~しは一粒残さず食べる派!』
『いやまぁ、それは俺もそうだけど……』
『ご飯粒綺麗に食べない人みるとちょ~っちイラっとしない?』
『する。ちゃんと全部食えよって思うわ』
『ね! 思うよね!』
「知らねぇよ! ご飯粒がちょっと残ってるくらい別にいいだろ! 貧乏くせぇ! てか直樹そんな事言った事なかったじゃん! ずっと心の中でこいつ米の食い方きたねぇ~とか思ってたわけ!? そん時言えや! いや、何度か言われた気はするけど! そんな事気にする方がちっちゃいでしょ!」
思い出して腹が立ち、マイクに向かって絶叫する。
とにかくだ。
直樹は浮気の腹いせにビッチと付き合う事にしたのだろう。
なんでビッチがそんなのに手を貸すのか?
そんなの知るか!
どうせビッチだ!
面白半分で直樹を弄んでいるのだろう!
あるいは千春の事を嫌っているからかもしれない。
千春は姫麗を嫌っている。
だってヤリマンビッチの癖にトップカーストに君臨してデカい顔してるし、清楚系美少女のあたしを差し置いて学校一の美少女なんて言われている。
まぁ、そんなのはガバい股を大安売りして手に入れた称号だろうが。
周りにぞろぞろと悪のヴィラン軍団みたいなイロモノギャルを従えているのも気にくわない。
自慢じゃないが千春はボッチだ。人気者だし勝手に友達だと勘違いして馴れ馴れしくしてくる奴は多いが、千春からすればみんなウザいだけの赤の他人である。
他人に愛想を振りまいておかないとイジメられるから仕方なく付き合ってやっているだけである。
基本的に千春は人間嫌いで人間という生き物そのものを憎悪していた。
一皮むけば人間なんか他人などどうでもいい身勝手で邪悪な生き物なのだ。
それでも直樹だけは違うと思っていたのだが……。
結局はセックスで繋がった関係だったという事なのだろう。
ちょっと他の男と寝ただけで手のひらクルンだ。
その証拠があるわけでもなければ現場を見たわけでもないのに!
確かに人目を忍んで隣町の高層マンションで密会して目の前でベロチュ~だってしたけれど、その程度の事でクロ認定するのは酷いと思う!
三年ちょっと付き合った彼女なのだから、少しくらいは何かの間違いや誤解だった可能性を疑ってくれてもいいはずだ。
そうでなくても、さり気なく探りを入れるようなラインをするとか、出来る事は色々あったはずである。
まぁ、された所で普通に既読スルーだろうが。
なんにせよ、直樹は千春に復讐するつもりで、ビッチはそれに協力するつもりなのだ。
それだけでも許せないのに、あの淫売コンビは心から恋人ごっこを楽しんでいやがる。
それが千春は自分でもビックリするくらい許せなかった。
直樹がビッチとヤッたという話を聞いた時以上にムカついて反吐が出そうになった。
危うく発狂して二人の目玉に箸を突き立てて脳ミソを掻き回しそうになった程である。
どうして?
知るか!
あんな男もう知らない!
どうせ隆以下の年収確定の負け犬ヒト雄間違いなしの冴えないモブ男だ。
むしろスッパリ切れてせいせいした!
直樹が別の女(それも超淫売のドビッチ)とくっついた今なら、こっちも隆との関係をオープンにしても波風は立たない。
むしろ応援される雰囲気にすらなるだろう。
直樹なんか忘れてこれからは新しい恋に邁進するのだ!
「………………出来るわけないでしょ、そんな事」
ボタボタと目から熱い物が溢れていた。
直樹を忘れて新しい恋に邁進する?
そんなの無理だ。
絶対に。
「………………だってあいつ、なんでもないって言ったのよ? 最愛の元カノのあたしと目が合ったのに! 人前で、あたしが、あんなにもブチ切れてたっていうのに! それがどれ程の事なのか知らないはずがないのに! なんでもないって言いやがった!」
しかもその後、どれだけ殺気を送ってもチラリともこちらを見なかった。
こっちが直樹を振ったのに、むしろ俺がお前を振ってやったんだというような態度で。
もうお前になんかこれっぽっちも興味がなくて、未練なんかもありませ~んと言いたげに。
許せない。
絶対に。
絶対にだ!
浮気したって千春は直樹を愛していた。
確かに浮気はしたけれど、その上デマを流して社会的に殺したけれど。
それでも確かに愛はあった。
もし直樹が隆並みの将来性を備えていたら、千春は間違いなく直樹に一生を捧げていただろう。
それが叶わなかったのは直樹にも責任があるんじゃないのか?
子供っぽい復讐に走る前に、少しでもその辺の事を考えなかったのか?
初めて身体を重ねる時に「愛してる」って言ってくれたのは嘘だったのか!
「……やられたらやり返す。万倍返しで! あたしはもう、あんたに守られてるだけの無力で泣き虫の貧乏神じゃない! みんなが憧れるモテモテの清楚系の人気者なのよ! ビッチにも思い知らせてやる! あたしの男を獲ったらどうなるか! 二人まとめて社会的に抹殺してやる!」
だってあたしは直樹を愛していたから。
だって直樹があたしの愛を裏切ったから。
だってビッチがあたしの愛を横取りしたから。
だから全部、悪いのは直樹とビッチの方なのだ。
結論付けると、千春は今後の作戦を練り始めた。
しばらくして携帯が鳴る。
相手は隆だ。
『もしも~し。千春ちゃ~ん? 僕だけど、これからちょっと会えないかなって』
今のは早漏語で、デートはしないけどセックスだけ出来ない? である。
(ざっけんな雑魚チン。こっちは今それどころじゃねぇんだよ!)
生理が始まったとか適当な言い訳をして逃げようかと思ったが。
不意に千春の口元が三日月型に嗤う。
「嬉しいなぁ。私も今、金城さんに会いたいなって思ってた所なんですぅ」
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