闇が透けていた

 港の船着き場近くに、漁師たちが住む家がある。

 道路は狭くて、一台しか通れない曲がり角が一つ。

 曲がり角の中には、だだっ広い駐車場がある。


 この駐車場の端をずっと奥まで進んでいくと、防波堤の陰に小ぢんまりとした家があった。


 牛河さんは、チラリとボクを見て、「古い、家だけど。気にしないで」と、恥ずかしそうに言った。


 家の壁は黒ずんでいて、蔦が二階の窓まで伸びていた。

 本当に小さな家だったので、台があれば小屋根に上がって、二階の窓まで辿り着けそうだった。


 小さな段差を下りると、立て付けの悪い戸を開き、「どうぞ」と牛河さんが招いてくれる。

 家に上がった途端、ふんわりとお菓子のような甘い匂いが漂ってきた。


「はぁ……」

「あまり、見ないで。恥ずかしいから」

「う、うん」


 女の子の家に来るのは、初めてだ。

 テレビで見かけるようなオシャレな家とか、都会にあるような家ではない。ましてや、ミサキさんの場合は、金持ちだから豪華なだけで、牛河さんの住んでいる家が一般的なのだろう。


 玄関から上がって、すぐ目の前にある階段を上がっていく。

 歩く度に床が軋む。

 しかも、階段が急だった。


「お、っと」


 踏み外しそうになり、慌てて手を突く。


「大丈夫?」

「うん。平気」


 言いながら顔を上げ、ボクは固まった。


「ウチの階段、急なんだよね」


 苦笑いをする牛河さんは、白いワンピースを着ている。

 スカートの丈は長くて、膝まであるから、風で捲れるようなことはない。けれど、階段の下からは、黒い下着が見えていた。


 階段の途中にある窓から光が差すことで、ワンピースの生地が空け、スカートの中に広がる闇を透かしていたのだ。


 加えて、ボクのいる位置が非常にマズい。


「部屋はこっちだから」


 そう言って、牛河さんは上がっていく。

 股の大事な部分だけが隠された下着だった。

 股下以外は透けた生地。

 なので、お尻の割れ目が見えていて、ボクはぎこちなく視線を階段の木目に移す。


「どうしたの?」

「あ、う、ううん」


 ボクには刺激が強かった。

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