常軌を逸してる
目を覚ますと、視界には天井が映っている。
随分と遠くに天井があり、見覚えのない模様。
すぐに自宅じゃないと気づいた。
気を失ったせいか、意識は
「あぁ、……頭……痛い……」
何をされたんだろう。
全てが曖昧な状態だった。
記憶がおかしい、というのは何となく分かるんだけど、具体的な事が思い出せず、ボクは額を押さえた。
「おはよ」
声に振り向くと、隣にはミサキさんがいた。
いつの間にかソファに寝かされており、包丁を片手にずっと隣で座っていたようだった。
辺りにケイゴさんの姿はない。
「あの、……ケイゴさんは?」
「外」
「はあ」
「どこまで聞いてるの?」
「何がですか?」
「これからの事。パパから説明されてないの?」
家政婦の仕事、としか聞いていない。
正直にありのまま話すと、「あ、そ」と興味なさげな返事をされた。
「名前は?」
「水野、アキラです」
包丁を腹に乗せられた。
刃を下向きにしているので、鋭利な感触が服を通して伝わってくる。
「あたしはミサキ」
「ど、ども」
「これからは、あたしのオモチャになるけど。その辺分かってる?」
オモチャ、と言われても、いまいちピンとこない。
だから、具体的に何をすればいいのやら、見当がつかないのだ。
「一つ、あたしに逆らわないで」
包丁を小さく上下に振り、腹をポフポフ叩き始める。
危なすぎて、血の気が引いた。
お腹に力を入れ過ぎないように緩める。
明かりが反射した包丁の平は、銀の光沢を放っていて、よく切れそうだった。
「二つ、変な気を起こしたら……」
包丁の切っ先を真下に向け、腹に突き立てる。
ほんの少しの力で、簡単に刺さってしまいそうだった。
「こんなところ。嫌だったら、帰っていいから。もう来ないでね」
ボクは包丁から目を離さず、質問する。
「掃除とかは……」
「適当にやって」
「わかり、ました」
狂ってる。
頭がおかしい。
常軌を逸したミサキさんの行動に、ボクは肝が潰れていた。
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