捨てられなかった手紙

春が過ぎ捨てられなかった手紙よ

砂埃草木波打つ春一番私の手紙飛ばしておくれ

夏過ぎて台風暴風ウネウネと私の未練を洗い飛ばして

走り行く地獄の業火を逃れけり貧相な春気怠い夏


秋が来て捨てられなかった手紙よ

手紙出す豊かな大地黄金にたわわに実る稲穂と共に

冬が来てらんらんと降る白ボタン私の心のボタンも閉めて

黒い鳥岩陰逃れ鉄の雨不作の秋生ぬるい冬


大空飛んだ黒い鳥

貴方の炎乗せて飛ぶ

まるで爆弾導火線

春夏秋冬忘れられず


年すぎて親族囲む病室の結局手紙は捨てられなくて

火葬場の煙巻き上げ春一番

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