第16話 メイド長
執事のアランは言った。
「鍵の管理や、メイドの雇用や解雇といった重要な仕事はしばらく私が行ってもよろしいでしょうか? リネ様」
「……よろしくお願いします」
私は自分の能力の無さにうなだれた。
「リネ様、お気になさらないでください。あなたはウォルター王子のお気に入りなのですから」
アランの冷ややかな笑顔を見て、私は不愉快な気持ちが沸き上がるのをおさえるのが精いっぱいだった。深呼吸をして、心を静める。
メイドの仕事を覚え始めたばかりで、メイド長の仕事なんてできるはずがない。
どうして、ウォルター王子は私にそんなことを命じたのだろう。
私は途方に暮れる思いで、アランの言うことを静かに聞いていた。
「それでは、メイドたちに挨拶を」
アランはメイドたちの控室の入り口に進み、中に入った。
「新しいメイド長がいらっしゃいました。さあ、挨拶を」
私はアランの前に進み、椅子に座っていたメイドたちに向かって言った。
「メイド長に任命されたリネと申します。よろしくお願いします」
メイドたちが立ち上がり、返事をした。
「よろしくお願いします」
メイドたちは私の顔を見て、不思議そうな表情を浮かべた。
「リネ様はお若いですが、ウォルター王子から直々にメイド長に任命されています。失礼のないように」
「はい。よろしくお願いいたします、リネ様」
メイドたちが微妙な笑顔を浮かべ、お辞儀をする。
私がメイドたちを見ていると、アランが言った。
「リネ様、メイドたちを仕事に戻らせてもよろしいでしょうか?」
「あ……はい。皆さん、仕事に戻ってください」
メイドたちは静かに控室を出て、それぞれの持ち場へ戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます