第10話 王宮へ

 ペアデ国の応急に着くと、ウォルター王子は馬車を降りた。

「さあ」

 ウォルター王子に差し出された手をとり、私も馬車を降りた。

 あたりを見回すと、あちこちの壁に剣で傷つけられた跡が残っている。

 私はため息をついた。


「リネ、行くぞ」

 ウォルター王子の後について、王宮の中に入ろうとすると背後から声をかけられた。

「あなた……リネット王女?」

「……?」

 私は用心しながら、声がしたほうに視線を向けた。

「……あ」

 そこには、私の代わりに殺された召使、リディの母親がたっていた。

 髪は乱れ、服もいつ着替えたのかわからないくらいに汚れている。

「あなたのせいで……私のリディは……」


 それだけ言うと、彼女は泣き崩れた。

「ああ、でも……あなたが生きていれば……この国はまた、素晴らしい国に……」

 私は何も言うことができず、ただ立ち尽くしていた。


「リネ、行くぞ」

「……はい」

 私はリディの母親を置いて、城の中に進んだ。

「……それでも……私はあなたを許さない」

 ひっかくように耳にのこった言葉を、私は振り切るために早足で進んだ。


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