10マスター

「ところで、あの魔法何ー?」


 ポーションを飲みながら聞いてくる。


「あー・・・なんて言えばいいかな。魔法は魔法なんどうけど。簡単に言うと風をコントロールして刀に纏わせた感じかな。」

「ふーん。風魔法にしては雷みたいだったし、切れ味も威力もとんでもなかったね。魔法をさっき使えるようになったはずなのに。それに、魔法を武器に纏わせるなんて聞いたことないよ!」

「あれ、でもアリアは体に魔法の雷纏ってるよな?」

「なんでさん付けに戻ってるのー?」


 腹を突かないでくれ、こしょぐったい。


「おほん。アリア。」

「よろしい!で、私の魔法は身体強化魔法だからね、自分自身に作用する魔法だから纏えるんだと思うんだ!でもおにーさんのは、完成した魔法自体を武器に纏わせたって感じなんだよ。」

「ふむ。なるほど。ちなみに武器強化魔法とかは?」

「多分ないと思うけどな〜。属性付与はあるけど。」

「俺の魔法が属性付与の可能性は?」

「属性付与にしては、強すぎって感じ。やっぱりおにーさんが言ってたように固有魔法ってやつなのかな?」


 あー恥ずい。魔法が出来てテンションが上がってたとは言え、いい年した大人が言うもんじゃないわ。キチィ。


「えと、ちなみに固有魔法なんてある?」

「んーどうだろうね。でも魔法なんて常に進化していくし、今この瞬間に新しい魔法も属性も生まれるかもだから、呼び方が違うだけであると思うよ。それに私の魔法も固有魔法みたいなもんだよ!雷魔法は私しか使える人がいないからね」

「確かに。」

「でも、おにーさんに雷取られちゃった」

「俺のはあくまで風魔法だよ。あと、あんまり固有魔法って言わないでくれ。恥ずかしいから。」

「えー私はいいと思うけどなー!かっこいい!私も今度から固有魔法って言おうかなー?」

「勘弁してくれぇ」


 アリアには敵わないな。



「おーーーーーい!大丈夫かー!?」


 話してると、7人ほどの冒険者がやってきた。

 多分ギルドからの救援かな。


「おい、アリア魔族はどうした!?」


 おっと、アリアの知り合いなのかな? 

 先頭を歩いてきた男は結構若いな。ただ金髪でチャラチャラしててなんかムカつくな。陽キャって感じだな。


「大丈夫だよー。もう討伐したから。」

「何?さすがはSランクだ。まさか魔族をソロ討伐とはな。」

「このおにーさんと一緒に戦って勝ったんだよ。」

「・・・説明してくれ」

「アリアちょっと来てくれ。」


 金髪チャラ男と少し距離を置き、小声で話す。


「何ー?」

「すまんが、俺の魔法のことは内緒で頼む。魔族は2人で戦ったけど、アリアが倒したってことにしてくれ。」

「え、どうして?」

「んーあんまり変に注目を集めたくないからな。それに・・・」


 それにあの金髪チャラ男は信じないだろうな。さっきからアリアと話す俺をちょっと睨んでくるし。


「おにーさんがそーして欲しいって言うならそーするよ!」

「あぁ、頼む。」


 金髪チャラ男の方に説明しにいくアリア。

 うまく説明してくれよ。


「おう、あんた無事だったか」

 

 森の入り口で会った冒険者パーティの1人がいた。


「なんとか無事です。あの、ポーションありがとうございました。全部使っちゃったんで後で買ってお返ししますね。」

「気にすんな!返さなくてもいーよ!あんた新人冒険者だろ?先輩の奢りよ」

「ありがとうございます。そー言えば名前聞いてなかったですね。俺はアサヒです。」

「俺はレオラルド、レオって呼んでくれ。よろしくなアサヒ」

「こちらこそよろしくお願いします。レオさん」

「それじゃー2人も無事だし、俺はギルドに戻るわ。後で飯でも食おうぜ」


 そう言い帰っていく。他の冒険者も魔族がいないのを確認し帰っていく。しかし金髪チャラ男はまだアリアと話していた。

 まだかかるのか。待ってる間にステータス確認するか。


「冒険者カードっと」


『Lv40

体力 62

攻撃 56

防御 44

俊敏 101

器用 70

魔力 74

運  41


スキル:身体強化(大)剣術(中)抜刀術(小)俊足(中)超反射

    加速思考ゾーン 風魔法 闇魔法 魔法造りし者       』



「Lvかなり上がったな。魔族はやっぱ経験値いいんだな。それにスキルも新しいのが増えてるな」


 一番気になるのはやはり魔法造りし者ってスキルだな。俺が魔法を作れるってことなのかな。しかも変わりに女神の加護が消えた。あのスキルが魔法造りし者になったのかもしれんな。よくわからん!!

 全部あとで確認しないとな。


「おにーさん帰ろう!」


 カードを手にうんうんと考えてるとアリアが戻って来ていた。


「話は大丈夫だったか?」

「うん。おにーさんの魔法とかは言わないようにしたよ」

「ありがとう。」

「ただおにーさんのこと悪く言うから、一発食らわせちゃったけどね!」

「一発て」


 アリアの後方を見ると腹を押さえてる金髪チャラ男がいた。


「あの金髪は何もんだ?魔族が出たってところに救助に来たくらいだから強いんだよな?」

「あれの名前はレックス・ロイス。貴族生まれのボンボンってところだよ。お金で良い装備武器仲間を買ってるから、彼自身はあんまり強くない。なぜかわかんないけど私に付きまとってくるんだ。」


 あーー・・・だから俺を睨んできたのか。


「多分アリアのこと嫁にしようとしてるんじゃないか?」

「え、無理。ただでさえ貴族嫌いだし、あいつは貴族じゃなくても無理。」


 スッゲー顔。めちゃ蔑んでる目をしてる。


「俺のことなんて言ってたんだ?」

「・・・2人で戦ったって言ったら、あんな雑魚が魔族に敵うはずがない、囮や盾にもならなかっただろう?って。」

「はは、で思いっきり?」

「腹殴った♡」

「最高だなアリアは」

「でしょーー!」


 Sランクの腹パン。絶対痛いわ。


「あいつはほっといても大丈夫だから帰ろう!」

「大丈夫ってならいいか。帰るか」



 森とレックスを後にし、ギルドに戻ってきた。


「お疲れ様です。大変でしたね。無事で何よりです」


 アリアの治療を待っているとカイサルさんが話しかけてきた。


「アリアがいたおかげで助かりました。」

「2人で戦ったとのことですが、ギルドマスターが詳しく聞きたいそうなのでアリアさんと一緒に来てください。」

「わかりました。」


 10分くらいでアリアの治療が終わり、一緒に2階の一番奥の部屋に案内される。


「マスターが中で待ってます。私はここまでなので。それでは。」


 カイサルさんは下に戻っていく。

 マスターか、怖いな。


「マスター入るよー?」


 さすがSランク。ノックも無しに入る。


「待っていたぞアリア、アサヒくん。」

「え」


 女の人だ。勝手な妄想だけど、ガチガチのおっさんが出てくると思ったが、なんと大人っぽい女性がマスターとは。身長は高めだな、170近いかもしれん。真っ赤な髪が印象的だ。マスターってよりは女王って感じ。


「ふむ、どうしたのかなアサヒくん」

「あ、いえ、女性だとは思わなくて。」

「アリア、私のこと教えてなかったのかい?」

「あ、忘れてた!」


 まぁ森で魔族に遭遇ってこともあったし仕方ないか。


「では。私は、王都オルビアギルドマスター、エディス・フレイム。エディでもマスターでも好きに呼んでくれて構わない。」

「えと、ではマスターで。アサヒです。」

「ふむ、では2人とも座ってくれ」


 ソファにアリアと座る。


「では、今回のことを説明してくれ。全てだ。」


 アリアが足をツンツンしてくる。

 あぁ、わかってる。全部話すか。俺の魔法も。

 

「わかりました。」


 そこから20分くらいで森であったことを話す。


「なるほどな。やはり魔族は強い冒険者を狙っているか」

「やはりってことは、他のところでも同じことが?」

「そうだ。他の国でもSランク、もしくはAランク以上の者が数名襲われたらしい。ただ、なんとか迎撃できたようだ。君たちみたいに討伐したと言う話はないがな。」

「なんのために襲っているのでしょうか。」

「目的はわからん。早急に対策を立てる予定だ」

「魔族の生息地とかはわかんないんですか?」

「それが何もわからないのだよ。どこでどう生まれ、どこに生息しているかわからないのが現状さ。ちなみにこの話はアリアに今日話したはずだが。」


 そういえば、朝にカイサルさんのとこに行った時、マスターに呼ばれてたな。


「・・・そーいえば言ってたかも!」

「ちゃんと覚えとけ馬鹿者。Sランクの自覚も持て。アリアの魔法は魔族にも勝てるものなのだからな。簡単に死なれては困るぞ?そして、君の魔法もだぞアサヒくん。」


 俺の目を射るように見てくる。


「話を聞く限り、アリアがダメージを与えていたとはいえ、魔族を両断できる威力があるんだ。それに新しい魔法なのだろう?これからもっと強くなってもらわないとな」

「頑張ってみます。」

「とりあえず、今はアリアと行動を共にしてくれ。」

「やったー!」


 横のアリアがバンザイして喜ぶ。


「アサヒくん、今回の功績でランクをAまで上げることができるがどうする?」

「遠慮しときます。」

「えーおにーさんなんでー?FからいきなりAなんて最短記録だよー?」

「ランクはもちろんSを目指します。でも今の自分の実力でAに上げてもらうわけにはいきません。まだまだ未熟ですからね。」


 それにいきなり初心者がAになったら色々噂が立つだろうしな。


「実力と実績でSに、いやそれ以上のSSSが目標です。」

「ふははは!SSSか大きくでたな!面白い男だ。アリアが懐くのも分かるな!」


 あーーまた恥ずいこと言ったわ。これですぐ死んだら笑い話だな。


「おにーさんが目指すなら私も目指そうかなー?」

「元々のスタート地点が違いすぎるんだが。」

「勝負だねーー」

「勝負は置いといて、頑張るか。一緒に。」 

「うん!!」

「では、話は終わりだ。2人ともこの後1階のカウンターに行ってくれ。今回の魔族討伐の報酬がもらえるようにしている。何かあればいつでもギルドに声をかけてくれ。」

「わかりました」「りょーかーい!」


 2人で部屋を後にする。

 さぁ報酬はいくらかな!



続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る