5スキル

「おはよーございまーす!おにーさん起きてるー?」


 アリアさんが勢いよく部屋に入ってくる。

 少し前に起きていた俺は、すでに準備を済ませていた。


「おはようございます。」

「準備早いねー!それじゃ、カイサルさんも待ってるだろうし、行こっか!」

「はい」


 傷は完全に治っていないが、歩いたりするのに問題はないだろう。


「こっちだよー」


 後をついていく。

 建物の外に出ると街の光景が目の前に広がってきた。まさに冒険者の街と言った感じだな。武器を売っている店や薬・薬草を置いている店に宿泊施設などがある。飲食店からはいい匂いがしている。大きい街だな。

 ギルドに向かいながら少し話でもするか。無言はきついし。


「たくさん人がいますね。ここはなんて名前の街ですか?」

「おにーさん、そんなことも知らないのー?ここはグロース王国にある王都オルビアって街だよ〜」

「なるほど。」

「おにーさんはこの国の人じゃないの?」


 やばいな、なんて答えたらいいのか。

 とりあえず誤魔化しとこう。


「いや、田舎の出身なので街の名前がわからないんですよね。ここまで大きな街に行った事がなかったので」

「へぇ〜。オルビアはグロース王国の中で一番大きくて有名なんだけどなぁ」

「田舎から出たことがなかったし、あまり外のことは興味なかったもので。」


 これで少しは誤魔化せたらいいんだが。他の国も聞いとくか。


「ついでなので、他の国についても教えてもらってもいいですか?」

「いいよー!えーと、グロース王国以外に、ルンデン王国・港市国家ブルーヒル・ニューオリブン帝国そして一番大きなランシット神聖国の5つだよ!」


 なーるほど。全く覚えらんねぇ。追々覚えるとするか・・・


「アリアさんは全部行った事があるんですか?」

「んーん、ニューオリブンとランシットは行った事がないよ。」

「なんでです?」

「ニューオリブンはあんまりいい噂聞かないし、危ない国みたいなんだ。ランシットは、大きい国なだけに偉い人がたくさんいるんだ。その偉い人をモンスターや魔族から守るために強い冒険者が集められているんだけど。私、偉い人は嫌いじゃないけど人を道具みたいに扱う人嫌いなんだ。そんな人達を守るのは無理。だから行かないし、呼ばれても行く気ないんだ〜。観光とかでならいつか行くかも知れないけどね」


 笑顔で話していたが、本当に嫌いだという気持ちは伝わってきた。

 もしかしたら過去に何かあったのかも知れない。 

 まぁ聞く必要はないだろう。

 

「そーなんですか。変なこと聞いちゃってごめんなさい。」

「えっ、なんで謝るの〜全然大丈夫だよ!」


 女の大丈夫は大丈夫じゃないってどっかで見たけど、ここは大人しく引き下がろう。


「着いたよー!ここがオルビアの冒険者ギルドだよー」


 でっか。

 横幅200メートルぐらいあるんじゃないのか?しかも4階くらいあるぞ。


「かなり大きいと思うんですが、これくらいが普通なんです?」

「んーここは王都ってこともあるから大きめに建てられてると思うけど、他の国はもっと大きいとことろもあるよ〜ギルドって言っても、ご飯食べるところとか軽い治療施設もあったりするから必然的に大きくなっちゃうんだぁ」

「ほえぇ〜」


 上を見ながら間抜けな声を出してしまう。完全に都会に迷い込んだ田舎者だ。


「ほら!行くよ!」


 手を引っ張られる。


「あっちょっ」


 中にはいる。

 すげぇ・・・

 人めちゃいる。 

 カウンターで職員と話している者、ボードに貼られている紙と睨めっこする者、仲間と談笑する者。とにかくたくさん人がいた。


「ここにいる人全員冒険者ですか?」

「ほとんど冒険者だよ。クエスト依頼に来た人とかもいるけどね」

「本当にたくさんいますね。そんなに依頼があるんですか?」

「年々依頼が増えてるからね。まだ冒険者が足りないくらいだよ。最近、どんどんモンスターは強くなってるようだし、強い人はいつでも歓迎って感じ」

「へぇ〜」


 話しながら歩いて2階の部屋に案内される。


「失礼しまーーす!」

「おはようございます。アリアさん、アサヒさん」


 中にはカイサルさんが座っていた。

 昨日と違ってギルドの制服を着ているためカッコよく見える。


「おはようございます、カイサルさん」

「おはよー〜!!」

「アリアさん、案内ご苦労様です。来てもらって早速ですが、ギルドマスターがお呼びです。上の部屋にいると思うので行ってきてください。」

「えーーまだおにーさんと一緒にいたかったなぁ。仕方ないなぁ・・・行ってきまーす。またねおにーさん」


 手を振って部屋を出るアリアさん。軽く会釈をする。


「アサヒさん、お座りください」

「はい」

「では、昨日話した通りに、冒険者にはなりますか?」

「はい!」

「承知しました。ギルドとしても冒険者はたくさんいてほしいですからね。ではまず、この水晶に手をかざしてください。」


 机の上に小さな水晶玉が置かれる。

 これは、あれだ。俺の魔力とか適正魔法とかスキルがわかるやつや! 

 めっちゃ楽しみや!!


 「これで大丈夫ですか?」


 水晶に手をかざす。

 黒と緑に光る。


「これで大丈夫です。それでは少々お待ちください。ギルドカードをお作りします。」

「わかりました」


 ワクワクしながら、5分ほど待つ。


「お待たせしました。こちらがアサヒさんのギルドカードです」

「ありがとうございます!」


 カードを受け取り確認する。

 

「ギルドカードでは、名前・冒険者ランク・ステータス・スキル・属性がわかります。表示内容は、名前とランク以外は本人以外には見えないようになっているので安心してください。」

「なぬほど。すごいカードですね。」


 どーゆー技術なんだろうか。

 とりあえず内容確認!


『名前 アサヒ Fランク 属性風闇

 Lv5

 体力 51

 攻撃 32

 防御 25

 俊敏 60

 器用 51

 魔力 26

 運  40


 スキル:身体強化(小)剣術(小)俊足(小)

     風魔法 闇魔法 女神の加護(微) 』 


 むむむむむ、いいのかどうかわからん。

 ステータス、スキルは後でアリアさんに聞くか。聞けたらだけどな。


「内容は確認できましたか?」

「はい、大丈夫です。」

「ステータスの数値はレベルが上がると一緒に上がるんですが、全員同じように上がるわけではありません。例えば近接武器をたくさん使っていると、レベルが上がった際に攻撃の数値がたくさん上がります。逆に防御をたくさん成功させていると、防御の数値が多めに上がります。」


 なるほどな。

 だから、俺の俊敏が少し高めなのか。

 ゴブリンと戦った時に、スピードと勢いに任せて戦っていたからな。


「色々と鍛えるのは難しいんですね」

「そうですね。スキルに関してはわからないことが多いんです。取得条件がわかっているものが多いですが、わからないものもあることは確かです。未知のスキルが急に出ることもありますが、その全てをギルドは全て把握できていません。」

「確かに、ギルドカードを作ってしまえば内容を確認できるのは本人だけですからね。」

「そうです。しかも本人もどうやってスキルを獲得したかわからない場合もありますから。その辺も含めてギルドは日々調査しています。」

「大変ですね。頑張ってください!」

「ありがとうございます。おっと、もうこんな時間ですね。私は仕事に戻らなくてはなりません。アサヒさんはどうされますか?今日からクエストを受ける事もできますが。」


 どうしようか。

 簡単なクエストを受けてもいいが、傷も完全に癒えていないしな。


「私とクエスト行こーーー!」


 後ろにはアリアさんがいた。

 いつの間に。全くわからんかった。


「アリアさん、マスターとの話はどうされたんですか?」

「んー?そんなのすぐ終わったよー!それよりおにーさん、冒険者登録終わったんでしょー?スキルとかの確認したくなーい?」


 全くその通りだ。 

 こんな序盤でSランクと冒険できるなんて最高だろ。可愛い女の子出し。

 別に下心はない。本当だよ?


「アリアさんが迷惑じゃなければ、お願いしたいですね。聞きたいこともあったので」

「オッケーー!行こーーー!!」


 また腕を引っ張られる。柔らかい。


「カイサルさんバイバーイ!!」

「カイサルさん、今日はありがとうございました。また何かあれば聞きにきます。」

「承知しました。アサヒさん、頑張ってください」


 引っ張られながら部屋を出る。

 

「1階のクエストボードにいい感じのあったらいいね♪」


 めっちゃ笑顔。かわい。

 さてさて、初クエストがこんな美女と一緒か。最高や!

 いやいや、浮かれてる場合じゃない!

 まずは俺のスキル確認だ。


 特に気になるスキル、女神の加護。これを確認せねば。



続く

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