4目標
「知らない天井だ・・・」
目が覚めた俺は、某有名アニメのセリフを言う。
「頭と体痛てぇ」
状況を確認しようとしたが、ゴブリンにやられた傷が痛む。
傷口を触りながら周りを見る。
誰もいないが、誰かがさっきまでいたようだ。新しい包帯やまだ温かいスープのようなものが置いてある。
「食っていいんかな・・・」
スープに手を伸ばす。
その時扉が開く音がした。
誰かがこちらにくる。
助けてくれた女性だった。
「あ!おにーさん!目が覚めた?大丈夫そ?」
「あっとーー・・・ダイジョウブ・デス。」
少し吃った言い方になってしまう。
「あはは!何その言い方ー!でも大丈夫そうだね、良かった良かった!」
笑顔で話してくる女性。見た目はすごく若く見える。髪はツインテールで赤黒のメッシュといった感じだ。身長がぱっと見だと160前後といったところか。普通に可愛い。
なんかめっちゃ笑顔でこちらを見てくる。やめてくれ、勘違いするだろ。
「あの、洞窟で助けてくれてありがとうございました。お陰で死なずに済みました。」
お礼を言って頭を下げる。
「全然いーよー!おにーさんには聞きたいこともあったしね!」
「聞きたいこと?」
「そう、まずは、おにーさんの名前は?私はアリア!」
「俺は旭です。」
「アサヒさんね!じゃあアサヒさん、あそこのダンジョンで何してたの?」
何してた、か。
なんて答えたらいいものか。
転生したら洞窟の中にいましたって言っても信じてくれるかわからないし、最悪不審者認定もしくは犯罪者になって自由どころか牢屋で過ごすことになってしまうかもな。
誤魔化すか。うん。そうしよう。
「興味本意で入ってしまいました。特に目的はありません。」
下手か俺。なにも誤魔化す言い訳が思いつかなかった。
「ふーーーん。まぁそーゆーことで納得してあげる。私はね。」
そう言うと、後ろの扉が開かれる音がした。
洞窟で助けてくれたもう一人の男が入ってきた。
「私は納得できないですね。あそこのダンジョンは立ち入り禁止のはずです。アサヒさんと言いましたか、あなたは本当に目的もなくダンジョンに入ったんですか?」
そう言いながら俺の目を睨むように見てくる。
「本当です。立ち入り禁止なのは知りませんでした。勝手に入ってしまって申し訳ありませんでした。ただ、本当に興味本位だったんです。すみませんでした。」
俺は男の目を見て、もう一度頭を下げる。
「・・・なるほど。本当のようですね。しかし、立ち入り禁止のところに入ったのは事実。今回は厳重注意させてもらいます。」
「わかりました。それにしてもあっさり信じてくれますね。疑ったりしないんですか。」
「目を見ればわかります。何か隠しているようには見えますが、あなたは悪い人じゃない。」
怖え。
「さて、申し遅れました、私冒険者ギルド職員のカイサルです。」
「あ、はい、アサヒです。よろしくお願いします。」
自己紹介をし、握手をする。
「ところでおにーさんは冒険者でしょ?ランクは?」
アリアさんが聞いてくる。
「ごめん、アリアさん、ランクって?」
「え、冒険者じゃなかったんだ。それじゃ冒険者登録もしてないんだ」
「すみません・・・」
「謝らないでよー説明してあげるっ!」
そこから説明を受けた。
冒険者ギルド。この世界のあちこちにギルドがあり、どこで冒険者登録をしても大丈夫らしい。登録した時にギルドカードが渡され、ダンジョン攻略やクエスト達成でランクが上がっていく。
ランクはF〜Sまでで、登録した最初はFからスタート。一応、SS・SSSのランクも存在するが今はいないらしい。
「なるほど。ありがとうございます、アリアさん」
「いえいえーってか、敬語やめてよー?おにーさんの方が年上でしょー?私19!!」
若!
「俺は24です。どうしても敬語になってしまうんだが、できるだけ善処します」
「また敬語〜」
年下だとしてもほぼ初対面だからどうしても敬語になってしまう。
「ちなみにアリアさんは冒険者でランクはSですよ。」
カイサルさんが言う。
「えっっ」
アリアさんを見ると、自慢げに腰に手を当て胸を張っていた。
「尚更敬語なんて無理ですね」
「いいんだけどな〜おにーさん⭐︎」
俺の顔を見ながらウィンクしてくる。
ほんと心臓に悪い。
「とりあえず今日はゆっくり休んでください。冒険者登録するかどうかは明日教えてください。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「明日にまたアリアさんが迎えにきますので。それでは。」
「また明日ね〜バイバイおにーさん」
二人が出て行った後、横になる。
冒険者にはなろう。
先ほどの話を聞いていて目標が一つ出来た。
「ランクSSを目指すか。」
今は誰もいないSSになる。
本気で挑む目標だ。ワクワクする。
高揚する気持ちを抑えつつ眠りにつく。
続く
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