第25話 新しい装備

「おじいちゃん~」


 中に入ってすぐに姉さんが声を上げると、前回会った店主のお爺さんが鋭い視線で出迎えてくれた。


「赤いのか。ん? 小僧…………なるほど。弟がいると言っていたが、小僧が弟か」


「どうも。以前譲って頂いた鉄のブレスレット二つ大変助かりました」


「なに。あんなもん大したものじゃないからのぉ」


 言うだけなら非常に簡単そうに思えるけど、そもそも製作系統のスキルは失敗確率・・・・が非常に高い。失敗した際に全ての素材が吹き飛ぶので、中にはメンタルと経済的に続けられない人も多いそう。


 あの鉄のブレスレットだって、多くの素材を失くしたはずだ。


「あれは嬢ちゃんが装備しているのか…………ん!?」


 お爺さんは目の色を変えて紗月に近づいた。


 嫌らしい気配はないので、僕も姉さんも紗月も付き飛ばしたりはしない。


「そ、それは……! ちょっと見せてくれ!」


 まさに早業。紗月の腕に嵌めていた腕輪を強引に奪った。


《スキル〖レベル破棄〗を獲得しました。》


 ん? 新しいスキル?


 僕のレベルは上がらないが、何かの状況・・・・・に陥った時に、新しいスキルを覚えたりする。


 初めて紗月に刀を渡そうとした時にも〖隠蔽〗を覚えたように。


「…………おかしい。わしが作った鉄のブレスレットと違う? いや、わしが作った物には違いないが、何かが付与・・されている?」


 さすがというべきか。称号にもあるように【名匠】の名は伊達じゃない。


 鍛冶師が作った装備にランクが付く場合、全部で六種類ある。【見習い】【下級】【中級】【上級】【最上級】【名匠】の六種類だ。


 お爺さんがどれだけ優れた鍛冶師だったとしても、作った装備が成功した際、必ず【名匠】になるわけじゃない。成功中の失敗で【中級】にもなるし、【見習い】にもなる。


 ただ未熟な鍛冶師が作った装備が運よく【名匠】になるなんてことはないのだ。【名匠】の称号を与えられる鍛冶師は、国中でも相当珍しい実力者なはず。


 それを裏付けるかのように、目利き・・・の実力も確かなモノだ。僕の〖隠蔽〗でステータス上昇値は見えないはずなのに、それを見抜けるなんてね。


「…………小僧に秘密があるんじゃな? くっくっくっ。中々面白い弟を持ったもんじゃねぇか。赤いの」


「えっへん! うちの誠也は最高の弟なの!」


「それはいつも聞き飽きたわい!」


 姉さん……僕がいないとこでも僕をおだてているのね……。


「それで、今日は何の用だ?」


「実はね。うちの弟に送る装備一式を売ってほしいんだ!」


「どういうのがほしい?」


 もはや僕の意見はなしに、姉さん一人で進めていく。


「えっとね~ここをこうしてああして~あ! こうなると危ないから、ここもこうして~あとランクは【名匠】付きで、三十層の素材で作ったやつ!」


「相変わらず簡単そうに注文するんじゃな」


「えへへ~だって――――おじいちゃんなら余裕でしょう?」


「くっくっくっ。丁度余ってる・・・・ものがあったな。二組あるがどうする?」


「じゃあ、スペアも考えて二つとも頂戴!」


「分かった」


 お爺さんが裏に入っていく。


「姉さん? あまり無茶は言わないでね?」


「大丈夫~おじいちゃん凄いんだから、あれくらい余裕だよ。四十七層の素材だけど、三十層なら十分素材も出回ってるから」


「そうなんだ……」


 まだ素材とかよく分かってないからな……ここは姉さんに全て任せるというか、そもそも今日ここに来た理由だって、姉さんに強制的に装備を買ってもらうためだしな。


 しばらく待っていると――――お爺さんがとんでもない物を持ってきた。


「ええええ!?」


「えへへ~これなら誠也も安全にダンジョンに挑戦できると思う!」


「い、いやぁ…………さすがにこれは…………」


 目の前に出されたのは、ごつごつとした黒い色の――――フルメイルだった。


「黒曜石で作ったダークフルメイルだ」


「わあ~! さすが~! これなら誠也をダンジョン攻略に向かわせても安心できるよ! ありがとう~おじいちゃん!」


 僕……これからこの鎧を着て狩りをしなくちゃいけないのか?


「紗月ちゃん! お願いがあるの!」


「は、はいっ!」


「これから誠也がちゃんと鎧を着て戦うかどうか、ちゃんと見張っててね?」


「分かりました!」


 …………紗月を説得するのも絶対無理なやつだな。


 念のためマジックパックを持ってきて正解だった。


 ダークフルメイルを二セット入れて、店を後にした。


 ご機嫌になった姉さんは、鼻歌を歌いながら紗月と仲良く帰路についた。




---------------------

【ステータス】

 腕 力:131

 俊 敏:31

 魔 力:1

 耐 性:101

 運  :23


【装備】

右 手:木剣Lv.10

 《攻撃力+100》《サイズ自由変更》

 《腕力+30》《俊敏+30》

 《強制ノックバック》

左 手:オークガードの大盾Lv.1

 《防御力+100》《パリィ30%》

 《挑発》

頭 部:名匠のダークフルメイル

胴 体:名匠のダークフルメイル

脚 部:名匠のダークフルメイル

装飾品:名匠のダークフルメイル

装飾品:名匠のダークフルメイル

 《防御力+1500》《腕力+100》

 《耐性+100》《ノックバック耐性》

 《再生》


【スキル】

〖装備レベル付与〗〖装備レベル剥奪〗

〖運気〗〖隠蔽〗〖レベル破棄〗

---------------------

〖レベル破棄〗

 遠くの装備のレベルを強制的に破棄させる。

 ※経験値は戻ってこない。

---------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る