第23話 相棒と姉と秘密
午後から紗月と一緒にダンジョンにきた。
「紗月。この腕輪使ってくれないか?」
「えっ……? いいの?」
「もちろんだ」
栗山くんに貸していた【名匠の鉄のブレスレットLv.10】を紗月に渡す。
通常の装備品は【鉄のブレスレット】になるけど、製作者が製作スキルが強くなればなるほど、【称号付き】となる。
爺さんの店でもらったブレスレットは、ブレスレットの中でも一番弱い【鉄のブレスレット】だ。
本来のステータスは【防御力+1】のはずなのに、名匠の称号が付くだけで【運以外のステータス+3】が付く凄まじい効果を持つ。
僕が一番弱い装備を求めたのには理由があって、鉄のブレスレットは装備ランクが一番下のFランクだと知っていたからだ。
木剣で既にFランクの必要経験値の少なさは知っているので、称号付き鉄のブレスレットを探していたら、たまたま名匠の鉄のブレスレットが見つかったってことだ。
称号付きは通常物と違って、装備を進化させた時、より高い効果をもたらす。
今回たった二本でここまで強くなるのも、全て名匠の称号付きだからだ。
ブレスレットを装着した紗月は、目を大きく見開いて驚いていた。
たぶん【身体能力+5】を二つ装備させて+10にしたことで、体の動かし方が全然変わるからだろう。
刀術をあれだけ巧みにこなせる彼女だからこそ、身体能力上昇の強みを肌で感じられるはずだ。
そんな僕達は二層を越えて三層にやってきた。
紗月がうきうきしながら周りを見渡す。
最初のゾーンは小さな小悪魔達が三体集まっていた。
「三層の最初の魔物はインプっていう魔物で三体ずつだよ~」
「分かった。援護するよ」
「うん! 先にいくね~!」
う、嬉しそうだな。
笑みを浮かべてインプの群れに斬りかかった紗月は――――身体能力上昇も相まって一瞬でインプ三体を倒した。
「わあ~! 刀と腕輪のおかげで動きやすい~!」
元々刀術の才能があるのか、理想の動きができずにいたように見えてたけど、やっぱりそうだったらしい。
それから次のゾーンはホブゴブリンが三体ずつ群れており、次はオークウォリア、最後のゾーンはレッドスライムだった。
核を集めながらどんどん倒して、レッドスライムゾーンで紗月のレベルを9まで上げるまでしばらく通うことにして、授業が終わった。
授業が終わってダンジョン入口前。
「紗月。今日姉さんがいるんだけど、どうする?」
「えっと……お邪魔じゃなければ、行ってもいい?」
「うん。いいんじゃないかな」
何より姉さんは彼女に謝らなければならないし。
いつものスーパーで三人分の食材を購入して、家に帰る。
扉を開けると中に電気が付いていて、姉さんが先に帰っていた。
「ただいま~」
「おかえり~!」
姉さんの元気な声が聞こえてくる。
「お、お邪魔します……」
続いて紗月が挨拶をしながら入ってくると、中からダダダッと急ぎ足で姉さんがやってきた。
「女の子!?」「セグレス様!?」
「前に言ったパーティーメンバーの紗月。こちらは僕の姉の
二人とも口をパクパクさせながらお互いを指差して僕を見つめる。
「はいはい。入るよ~」
紗月の背中を押して、中に入れさせる。
固まっている姉さんも背中を押して二人をソファーに座らせて、僕は料理を始めた。
「せ、誠也ぁぁぁぁぁ!」
「姉さん。最初に言うことがあるでしょう?」
「えっ?」
「まずちゃんと謝罪するべきじゃないの?」
我に返った姉さんは、紗月の前に立った。
「あ、あの……紗月さん?」
「よ、呼び捨てにしてください! セグレス様!」
「え、えっと……まず、本当にこの度は私のせいで色々ご迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございませんでしたああああ!」
それはもう見事な土下座。
「ひいいい! セグレス様! 顔を上げてください! むしろ私がごめんなさい! 誠也くんと仲良くしてごめんなさい!」
そこ謝るんだ……。
ちょっと意地悪して二人があたふたするのを眺めながら、夕飯を作り続けた。
二人は三十分ずっとそんな調子でお互いに謝ったり感謝したりしていた。
夕飯作りが終わって、やっと二人にテーブルについてもらった。
「「「いただきます~!」」」
隣に姉さんと、向かいに紗月。三人で一緒にご飯を食べる。
食事をしながら、僕と紗月が出会ったことを全部姉さんに話した。
僕が襲われたって聞いた時は、姉さんから一瞬凄まじい殺気が感じられたが、すぐに撃退したと伝えた。
食事が終わって、みんなで皿洗いをして、アイスを食べながらソファーに座った。
「誠也? 少し聞きたいことがあるんだけど……」
「うん?」
「えっと……」
姉さんは申し訳なさそうに、両手の人差し指をつんつんと合わせながら、続けた。
「誠也のレベル成長限界値が1ってことだけど、どうやって悪い生徒をやっつけれたの?」
ごく当然の疑問といえば当然だ。
姉さんは最上位探索者。
少なくとも力の見極めや見比べは誰よりも上手いはず。
レベルが1である僕が彼らを簡単に投げ飛ばした理由。
さらに紗月とパーティーを組んで、一緒にダンジョンの三層を攻略中である事。
全てが
「実は、姉さんにも紗月にもまだ言ってなかったけど――――僕のレベルは1で間違いないんだけど、それ以外の
「装備品の……レベル?」
僕は懐に忍ばせていた小さくした木剣を取り出して、通常サイズに戻した。
「これはレベル最大まで上げた木剣なんだ。色んな追加効果があるよ。ほら。装備してみて」
姉さんに渡すと、恐る恐る装備する。
もちろん、姉さんの可愛らしい目が大きく見開いて驚いたのは言うまでもない。
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