第8話 成長の成果

「うわぁ…………」


 僕は思わず声を上げた。


 それはほんの少しの出来事だった。


 アッシュラットを懸命に倒していた僕は、一つ悪だくみ・・・・を思いついてしまった。


 戦いやすいように木剣を少し伸ばしてみたら、簡単に振り回せるのが分かった。原理は知らないけど、実際長さが伸びた木剣だが、重さは全然増えてない。


 そこで限界まで伸ばしたらどれくらいになるかなと思い、伸ばしてみたら――――二十メートルまで伸びた。


 つまり、僕の攻撃射程範囲が二十メートルになった瞬間だった。


 歩きながらアッシュラットを見つけては、木剣を高速に伸ばして当てて、元の大きさに戻す。なんとタイムラグが一切ない・・・・ので、一瞬で攻撃したように見える。


 一瞬で貯まった経験値でレベルを5から7に上昇させると、アッシュラットが一撃になったので、ゆっくり歩きながら目に付くアッシュラットを乱獲した。


 暫く狩りを終えて、経験値が貯まったので全部入れてみる。


---------------------

 【木剣Lv.10】

 カテゴリー:武器

 攻撃力+200、サイズ自由変更

 腕力+30、俊敏+30、強制ノックバック

 Lv1:攻撃力+49

 Lv3:攻撃力+50

 Lv5:サイズ自由変更

 Lv7:腕力+30、俊敏+30

 Lv9:攻撃力+100

 Lv10:強制ノックバック

---------------------


 なんだこの魔改造木剣は……。


 どうやらレベルは10で終わりみたいだけど、他の装備もレベル10で終わりなのかな?


 ひとまず、狩場を変えて、次の狩場に向かう。


 探索者が多いのかなと思いきや、あまりにも初心者ゾーンのようで、殆どの人がいない。


 先生が言っていた「ダンジョンの奥」というのは、中心部から離れれば離れる程に強い魔物が現れるからだ。


 しかも、入った場所によって入口が違うので、ある一定を超えると逆に弱くなる仕組みになっている。そこを【境界線】というけど、その前に二層に行ける魔物を倒せるはずだ。


 基本的に強い魔物と戦いたかったら一定方向に歩き続ければ、どんどん強い魔物が現れる。


 ダンジョン内の景色は地殻変動は起こらないので、景色を覚えておけばいつでも方向は簡単に分かる。


 僕がいるところだと、北側に見える大きな山が北方面をずっと指している。


 なので、僕は東に向かう。大半の人は山に向かうか、その逆を目指すからね。


 歩いていると、肌を包む空気の雰囲気が変わる。ゾーンが切り替わったことを示す。


 すると今度現れたのは、大きな灰色の蜘蛛だった。


《経験値8を獲得しました。》


 アッシュスパイダー。経験値量は変わらない4だが、レベルは3。僕は二倍獲得となる。さらに一撃で倒せるので、一瞬で倒せる。


 さらに進み、今度現れたのは、二メートルの緑色体を持つ巨人だった。


《経験値10を獲得しました。》


 オークはレベル4か。ダンジョン一層で現れる魔物は経験値が4で固定されているようだ。


 ただ、僕にとってはレベルの差のおかげで多くの経験値を得られる。


 ボーっとオークを倒していると、どこかで戦う音が聞こえる。


 鋭く剣が斬りつける音。


 近くの岩の後ろに隠れて覗くと、そこには長い刀でオークを斬りつける美しい――――少女が一人見えた。


 まるで天女が舞うように刀を振り回し、オークの攻撃を全て避けながら倒す。


 水無瀬紗月さんだ。


 いくら東を目指したとはいえ、ここまで歩けば微妙に角度がずれて知り合いに会うなんてまずないはずだ。


 しかも、今日は土曜日。まさかこんなところにいるなんてな。


 …………。


 あまりバレたくないので、一度【帰還】でダンジョンを後にした。


 僕が消える寸前、彼女がこちらに視線を向けたような気がした。


 ◆


 家に帰りお昼を食べて、またダンジョンに向かって、今度は西を目指して歩きながら経験値を貯めていく。


 どんどん倒していく間、誰とも出会わなかった。


 オークのゾーンにたどり着いて、もう少し歩いてみる。


 次々倒していくと、ひときわ大きなオークが見えた。


 一層フロアボスのオークガードか。


 フロアボスは通常魔物と違って、大勢で倒すタイプで、経験値を分けるものではなく、参加した全ての人が決まった量の経験値を獲得する。だが、今では一層や二層などのフロアボスを倒す人はいない。


 ドロップ品を狙って強いパーティーが倒すことはあるが、レベルが5とかなので、経験値の足しにもならないからだ。


 …………僕一人で倒せたりするのだろうか?


 【強制ノックバック】というものがあるから…………遠距離攻撃さえされなければ二十メートルから来れなくなるはず……?


 確かに確証はない。でもここまで来れたのは、〖装備レベル付与〗のおかげだ。


 だから今の僕はここに書かれた文言を全て信頼できる。


 それに――――確証はなくても、どうしてかいける気がした。


 自惚れ――――あったのかも知れない。けれど、ここで一歩踏み出せないのなら、僕は永遠に姉さんのところには行けないと思ってしまった。


 伸びた木剣が、巨大なオークに当たると、大きく数メートル後ろにノックバック・・・・・・した。


 当然一撃で倒すのは無理で、何度もこちらにやって来るフロアボス、オークガードに木剣を最長に伸ばして何度もノックバックさせる。


 それを繰り返すこと――――10分。


 オークガードが前に倒れた。


《経験値3000を獲得しました。》


《【オークガードの大盾】がドロップしました。》


《加護【経験値】が進化しました。》


《スキル〖運気〗を獲得しました。》


---------------------

 〖運気〗

 装着中の装備レベル数値分、運が上昇。

 (上昇量:Lv×2)

---------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る