第15話 ・メイ見たよ。その後も、女神さまのおっぱい揉んでた

俺のことだな。へへっ、俺もこれで異世界転移後、ようやく幸運が訪れたってわけだ。何しろ、町を救ったスーパーヒーロー。それがこのジンゴロウ様さ!


 ふひひっ。


「え? 全然? なんにも助けてくれてないよ? ねえ、メイ?」


「うん、マイ姉ちゃん。どっちかというと、邪魔してた。ねえ、アイ?」


「そうそう。マイ見てた。ラルのおねえちゃんの鎧の下に手を入れておっぱい触ってた」


 町の人たちの歓喜の声が、ぴたりと止んだ。


 えー! 何言ってんのー! お子様たちー!


「そうそう。押し倒してた」


 周囲の空気が急に冷たくなってきた。


「そうだ! 思い出したぞ!」


 丸坊主のマッチョが叫んだ。


「あの男だ! あの男が巨獣グルーガンを誘導して、俺の働く召喚獣の店「カトレア」を破壊したんだ! だから召喚獣が暴走してしまったんだ」


「メイ見たよ。その後も、女神さまのおっぱい揉んでた」


 ちょっとー! それは不可抗力―!


「アイもみた。女神さまの幸運のダンスの邪魔もしてた」


 違うってのー!


「だから町がこんなに破壊されてしまったのか!」


 


 せっかくみんなと町を救ったのに、誤解されるなんて、ついてない! 


 ……いや、誤解と言うか、真実も含んでいるけど……まあ、どっちにしてもついてない!







 召喚獣の脅威から救われた町は、復興は明日からにし、今夜は盛大なお祝いと町を救った英雄たちに対するお礼のパーティを行うことになった。




 ラルとフォル、そして俺は、町の人々に案内され、地震による建物倒壊の被害が少なかった地区へと移動した。


 どうやら地震の影響は局所的だったようだ。天然の地震とゴーレムの人工的な地震では、範囲が違うもんなんだな。


 そこではパーティの準備が整い、徐々に人々が騒ぎ始めていた。


 どの顔も、九死に一生を得て、助かった喜びに満ち溢れていた。




 俺以外は!




 ラルとフォルは、それぞれこどもと町を救った英雄として、主役扱いだ。祭壇のように作られた壇上の特設テーブルでごちそうに囲まれている。


「ありがとうラル様。さすがメルクリン家のご令嬢です」


「ああ、女神様、ようこそこの町へ。何もございませんが、せめてお腹いっぱい召し上がってください」


 次から次へと町の人がやってきては、二人にお礼や感謝の言葉を述べていく。


「いえいえ、そんなことはありません。メルクリン家の者として、当然のことをしたまでです」


「あのっ、そんなっ、私なんてっ、あのっ、ホント、気楽に話しかけてくださいっ」


 ラルとフォルはそれぞれ、謙遜の塊だ。


はい、そして俺はどうなったでしょうか。




「おい、変態野郎! さっさと歩け!」


「いて、いてて、そんなに強く押すなっての!」


「あのどさくさに紛れて、ラル様とフォル様のおっぱいを揉むなんて、ふてえ野郎だ!」


「だからそれは、誤解なんだって!」


 マッチョ達数人のごっつい男たちに囲まれ、強い口調の嵐を浴びていた。


「おーい! 牢屋の準備ができたぞー!」


「おう! できたか!」


「ああ、倒壊しかかった物置を利用したものだが、朝までなら大丈夫だろう」


「朝になったら、城の牢屋に移そう」


 なんだって? 牢屋? 冗談じゃない!


「おら、入れ、変態野郎!」

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