第15話 ・メイ見たよ。その後も、女神さまのおっぱい揉んでた
俺のことだな。へへっ、俺もこれで異世界転移後、ようやく幸運が訪れたってわけだ。何しろ、町を救ったスーパーヒーロー。それがこのジンゴロウ様さ!
ふひひっ。
「え? 全然? なんにも助けてくれてないよ? ねえ、メイ?」
「うん、マイ姉ちゃん。どっちかというと、邪魔してた。ねえ、アイ?」
「そうそう。マイ見てた。ラルのおねえちゃんの鎧の下に手を入れておっぱい触ってた」
町の人たちの歓喜の声が、ぴたりと止んだ。
えー! 何言ってんのー! お子様たちー!
「そうそう。押し倒してた」
周囲の空気が急に冷たくなってきた。
「そうだ! 思い出したぞ!」
丸坊主のマッチョが叫んだ。
「あの男だ! あの男が巨獣グルーガンを誘導して、俺の働く召喚獣の店「カトレア」を破壊したんだ! だから召喚獣が暴走してしまったんだ」
「メイ見たよ。その後も、女神さまのおっぱい揉んでた」
ちょっとー! それは不可抗力―!
「アイもみた。女神さまの幸運のダンスの邪魔もしてた」
違うってのー!
「だから町がこんなに破壊されてしまったのか!」
せっかくみんなと町を救ったのに、誤解されるなんて、ついてない!
……いや、誤解と言うか、真実も含んでいるけど……まあ、どっちにしてもついてない!
◇
召喚獣の脅威から救われた町は、復興は明日からにし、今夜は盛大なお祝いと町を救った英雄たちに対するお礼のパーティを行うことになった。
ラルとフォル、そして俺は、町の人々に案内され、地震による建物倒壊の被害が少なかった地区へと移動した。
どうやら地震の影響は局所的だったようだ。天然の地震とゴーレムの人工的な地震では、範囲が違うもんなんだな。
そこではパーティの準備が整い、徐々に人々が騒ぎ始めていた。
どの顔も、九死に一生を得て、助かった喜びに満ち溢れていた。
俺以外は!
ラルとフォルは、それぞれこどもと町を救った英雄として、主役扱いだ。祭壇のように作られた壇上の特設テーブルでごちそうに囲まれている。
「ありがとうラル様。さすがメルクリン家のご令嬢です」
「ああ、女神様、ようこそこの町へ。何もございませんが、せめてお腹いっぱい召し上がってください」
次から次へと町の人がやってきては、二人にお礼や感謝の言葉を述べていく。
「いえいえ、そんなことはありません。メルクリン家の者として、当然のことをしたまでです」
「あのっ、そんなっ、私なんてっ、あのっ、ホント、気楽に話しかけてくださいっ」
ラルとフォルはそれぞれ、謙遜の塊だ。
はい、そして俺はどうなったでしょうか。
「おい、変態野郎! さっさと歩け!」
「いて、いてて、そんなに強く押すなっての!」
「あのどさくさに紛れて、ラル様とフォル様のおっぱいを揉むなんて、ふてえ野郎だ!」
「だからそれは、誤解なんだって!」
マッチョ達数人のごっつい男たちに囲まれ、強い口調の嵐を浴びていた。
「おーい! 牢屋の準備ができたぞー!」
「おう! できたか!」
「ああ、倒壊しかかった物置を利用したものだが、朝までなら大丈夫だろう」
「朝になったら、城の牢屋に移そう」
なんだって? 牢屋? 冗談じゃない!
「おら、入れ、変態野郎!」
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