第6話 ・やはり、ジンゴロウはあたいの見込んだ通り、凄い男なのか?

・やはり、ジンゴロウはあたいの見込んだ通り、凄い男なのか?


「くらえ変態野郎! マッチョ流体術奥義 鉛玉!」

マッチョによるマッチョのための体術なのだろうか。

駆け寄ってきたマッチョと呼ばれるその丸坊主のガードマン兼用心棒みたいな大男に、俺は激しいショルダーアタックを繰り出された。

「いってえええええーーーーー!」

俺は水平方向に吹き飛びながら絶叫する。

ドッスン!

どのくらい吹き飛んだのだろうか、急に俺の視界が真っ暗になった。生暖かい感覚に首から上が包まれる。どこかの穴に頭だけが突き刺さったようだった。

「ぎゃああああ! くっさああああああい!」

 なんだこの異臭は! まるで肥溜めに頭を突っ込んだようだ! 俺はあまりの臭さに、じたばたと手足を動かした。

 すっぽん。ドスン!

 俺は尻から地面へと落っこちた。

「イテテ、な、なんだ? どうなったんだ?」

 俺が顔を上げると、そこには塔を引っ張っていた巨獣グルーガンのお尻があった。よりによって、一番でっかいグルーガンだった。


 ドッ!


 一斉に町の人々から笑い声が上がった。

 どうやら、俺は巨獣グルーガンの肛門に頭が突き刺さったらしい。顔はうんこまみれだ。まだ頭が臭い!

 うわっ、恥ずかしい! 

 と思った次の瞬間、聞いたこともない奇声が響いた。

「キャヒヒヒヒヒイィィィ!」

 それはグルーガンの声だった。どうやら俺が肛門に突き刺さった痛みが、今頃になって脳に届いたようだった。

「マズイある! グルーガンが興奮したある! みんな逃げるある!」

 巨獣グルーガン一行を誘導していた男が大声で叫んだ。

「巨獣グルーガンの最大の弱点は肛門ある! マズイある! 暴走するある!」

「うっそだろ!」

 次の瞬間、最も大きな巨獣グルーガンはけたたましいうなり声を上げながら、前方へと突っ走っていった。

 大通りにいた人々は必死の形相で逃げ出す。

 突然、グルーガンの動きが止まった。そして頭にグルーガンの汚物がついたままの俺の方を振り返った。

「あらー、目があっちゃいましたね。こんにちは」

 俺は薄ら笑いを浮かべながら、ぺこりとグルーガンにおじぎをした。

 その瞬間、グルーガンは察したようだった。「これが肛門にささったヤツ」だと。

 グルーガンは砂埃を巻き上げながら、俺へと突進してきた。

「いやだああああ、うんこまみれのまま、死にたくない―!」

俺は回れ右をして、走り出した。

目の前には、よろよろと立ち上がったラルがいた。顔がまだ赤い。ちょっと目が涙目だ。

「なんかかわいいな、って言ってる場合か! ラル―! 助けてくれ!」

「あたいの知り合いにうんこ顔の男はいないよ!」

「俺だよー! ジンゴロウだよー!」

「ギャー! こっちに来るな、ジンゴロー!」

「助けてくれー!」

 俺はラルに飛びついた。

「離れろー! あたいを巻き添えにするんじゃない!」

「いやだー! 絶対に離さんぞー! 元はと言えば、ラルのせいだー!」

「あたいのせいにするなんて、サイテーだよ!」

 サイテーで結構だ! 俺は必死にラルにしがみつき続ける。

 そして巨獣グルーガンが今にも俺たちを吹き飛ばす!

 

 と、その時、ラルのアンタッチャブルアーマーが煌めいた。

 そしてラルにしがみついた俺ごと、素早く回避運動を始める。

 アンタッチャブルアーマーは、俺がしがみついているにも関わらず、ラルの身体を歴戦の戦士を思わせる体さばきで、巨獣グルーガンの迫り来る、牙、前足、後ろ足を、ヒラリヒラリと回避していった。

 そしてアンタッチャブルアーマーは、安全な場所で動きを止めた。

 そこは高級召喚獣の小瓶を売っていた店の前だった。


「まさか、あたいを利用する作戦だったのか? あの短時間で、そこまで読んでいたのか? やはり、ジンゴロウはあたいの見込んだ通り、凄い男なのか?」

「え? あ? ああー、うん。そう。そう。作戦通りさ!」

 勘違いも甚だしいが、まあ、そういうことにしておこう。

 ふう、助かった!

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