第6話

 恐ろしく久方ぶりに顔合わせる勇者パーティーと和葉たち二人。


「ここはお通夜かしら?」

 

 この場に流れる地獄のような雰囲気を前にアレナが呆れながら呟く。


「はは……そうだな。半年のブランクにあのスライムの件でちょっとした溝もあるが、そこまでかしこまることもないだろう。まずは俺の方から」

 

 アレナの言葉を受け、緊張を崩した悠馬が和葉と珠美へと深々と頭を下げ、それに他の勇者パーティーメンバーも続く。


「まずはお礼を。数多の冒険者らを引き連れておきながら千代田区ダンジョンのダンジョンスタンピードを対処出来ず、すまなかった。俺が不甲斐ないせいで君たち二人には迷惑をかけた」


「いえいえ、そんな謝れることじゃないよ……悠馬さんたちが負けたのにもイムちゃんが絡んでいるでしょう?やっぱり」


「ん?悠馬たちをどうこうしなさいって命令はスライムからのではなく、お姉さまからの命令だから別よ?」

 

 アレナが和葉の言葉を否定する。


「あっ、そう」


「……そうなのか?」


「えぇ、そうよ。そもそもとしてあのスライムは何処まで行ってもそこの和葉しか見ていないもの。根本的に人間を数で見ているお姉さまは人類最強を優先し、面白さを優先するスライムは激動の時を過ごす和葉を優先しているのよ」


「……なるほど」

 

 アレナの言葉に悠馬は神妙な面持ちで頷く。


「イムと同格のお姉さま、ねぇ……これは、無理なのかもしれんなぁ」

 

 そして、悠馬は全身から力を抜いてソファへと体を倒す。


「まずは一つ。イムの発言故にどこまで信頼できるかもわからぬが、イムは空気中の魔力を自分の色に染め上げることでようやくその維持が可能な魔物であり、空気中の魔力が自身を支えられる量がないところには権限出来ない。これであっているか?」


「あっているわよ……正確にはあのスライムを含め、超級の方々であっても魔力は自分から生み出せるんだけど、認識としては悠馬のであっているわ」


「なるほど。ではやはり……あのスライムも全力でないのだろう?」


「えぇ、足元にも及ばない軟弱な姿よ?今のスライム。貴方たちに勝てるチャンスが少しはあるかもしれない程度の弱さとか、本体を知っている私からして見えば驚愕よ」


「今のイムを倒したことところで俺らに意味があるとは思えぬがな……スライム以外にも同格のが?」


「そこそこいるわ」


 悠馬の言葉にアレナは迷いなく頷く。


「……勝てるようになるビジョンが見えぬな」

 

「……そう、だね」


「……」

 

 絶望の二文字。

 本来の強さの足元にも及ばない状態のイムを相手に勝てるかもわからないのに、本丸としては本来の強さを手にしたイムにその他多くの同格の魔物。

 人類が魔物に勝てるビジョンなどほとんど見えないと言って良かった。


「だが、それでも俺は何の意味がなくとも……イムへと剣を向け、俺はあいつを殺す。これは絶対だ」


 だが、そんな状況下にあっても。

 悠馬は力強い力と殺気を込めて和葉と珠美の二人に向かってそう宣言した。

 

 

 

 

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