第5話

 この半年間。

 一切手つかずで放置されていた勇者パーティーの邸宅。


「おぉー、これが高度な文明を持つ人間の住居ですが!ふふふ、勉強になりますねぇ!これがレンジ、っていうやつですか?一体どういう原理なんでしょうか?ちょっと分解してもいいですかね?」

 

 半年間放置されていてもなお、魔法によって維持され、きれいな状態で保たれていた勇者の家の中をアレナは目を輝かせながら物色する。


「別にいいわよ?新しく買えばいいしね……私たちが放置されている間に円が暴落していたりしないわよね?」


「それはないと思うよ?日本が滅びない程度になるよう手加減しているはずですし。各種インフラ、工場などは無事のはずよ」


「……本当にあなたたちが不気味だわ」


 アレナと会話する勇者パーティーの遠距離攻撃担当である林桜がしっかりと手加減したと話すアレナに対して眉をひそめる。


「私としても上が急に侵攻を始めたのって意外中の意外なんだよ。別に私たち魔物は魔力さえあれば十分で、土地に制限もない。尽きることなき魔力と無限の空間を持つ魔界で私たち魔物は永遠に暮らしていけるし……わざわざなんで侵攻なんてしたんだろうね?」

 

 それに対するアレナの答えは本心で私も分からなくて困っていると言った表情だった。


「上の考えていることはいつだって私たち末端の人間にはわからないものよ」


「……魔物も人間もそこら辺は変わらないのね」


「私たち魔物だってちゃんと知恵があるもの。同じだけの知恵があるもの同士、基本的な構造は同じよ」


「そういうものなのね」


「そういうものだよ」

 

 桜の言葉にアレナは頷く。


「……世辞辛いわね」


「えぇ」

 

「人間と魔物がどうしてそんなところで意気投合しているんだ」

 

 二人して項垂れている桜とアレナへと悠馬が声をかける。


「早く二人もこっち来い……これからの方針をアイオーンチャンネルの二人と決めるからな」

 

 そして、悠馬は桜とアレナに和葉たちアイオーンチャンネルの二人と勇者パーティーの揃っているリビングの方に来るよう促すのだった。

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